『スキルはマイナス、相棒はAI!? ツッコミだらけの異世界転生』

杏朔

第1話 ハズレスキルと脳内AI

ハズレスキルと脳内AI


「――あなたに与えられる力は、

    『現代日本の知識を消す能力』です」


女神の一言に、俺は数秒間固まった。


「……はい?」


「ですから、あなたが覚えている現代の知識――科学、歴史、常識などをすべて打ち消す力です」


「いやいやいや! 普通こういうのって“現代知識チート”とか“スマホ持ち込み”じゃないんですか!?

なんで逆!? 完全にハズレスキルじゃん!」


女神はにっこりと微笑む。

「大丈夫ですよ。補助をお付けしますから」


「補助?」


次の瞬間、脳内に電子音が響いた。


――《ピンポーン♪ 新規ユーザーを検出。サポートAI《アルト》が起動しました》


「はぁ!? 脳内に声が!? え、AI!?」


――《はい。私はあなた専属のサポートAI、アルトです。任務は状況分析、意思決定の補助、そしてマスターのボケに対するツッコミです》


「最後の任務いらないだろ!!」


――《統計によるとマスターの発言の68%がボケ、27%が天然、残り5%はただの失言です》


「どんなデータだよ!? 俺そんなにポンコツじゃねぇ!」


――《自己認識能力に重大な誤差を確認しました。ツッコミを強化モードに切り替えます》


「やめろぉぉぉ!」


女神はクスクス笑いながら、俺を見ている。

「それでは、異世界でのご武運をお祈りしています」


光が弾け、視界がぐにゃりと歪んだ。

気づけば俺は、真っ逆さまに異世界へ落ちていく。


――《転生プロセス開始。なおマスターの初期設定は“鈍感系主人公”に固定されています》


「勝手に設定すんなぁぁぁぁ!!!」

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