第7話 激闘
[176日] ウラグ・ヨウジ[おやぁ残念でしたね貴方達の中であの女性が1番、水の精霊と相性が良かったんですね]笑いを堪えながら言う。ツミト・カズ[珠に触れた人のみじゃないのか]怒気の籠もった声で問いかける。ヨ[言ってませんでしたっけ光に包まれた中で1番、相性が想いが強い人が試練の世界に行くのですよ] カ[貴様〜知ってて教えなかったな]殴ってやろうと詰め寄ろうとした時、キンの拳がウラグの顔面にめり込んだ鼻血を出しながら吹っ飛ぶ。ヨ[ぐあっ]ウラグは倒れたがキンは馬乗りになり容赦なく顔面に拳を叩き込む。ラシヨ・ヒロ[キンちゃん、もう止めてお願い]キンの右腕にしがみつく、シンも左腕を掴む。キアータ・キン[離せ、、離せぇ〜]怒りの大声で叫ぶ。カ[充分じゃないが、もう止めろキン]カズとキンが睨み合う。キ[、、、ヒロ、シン離してくれ]落ち着いた声で言うとヒロとシンは腕を離した、2人が止めに入らなければ確実に殴り殺していただろう。カ[さて、どうしたもんか]珠に触れて念じてみたが何の反応も示さなかった、ただ中心が淡く輝いている。キ[破壊してみるか] ヒ[それは止めといた方が、、] ミヤト・シン[そうだな] カ[ユリを信じて、、待つしかない]カズは悲しそうな顔でそう言うしかなかった。ヒ[そうね、、ユリは強いもん、それにコストさん言ってたじゃない剣の腕だけじゃない、戦う強さだけじゃないって] キ[あぁ、、そうだなユリは強い、それに何故あの男がくだらん事をしたか心当たりがあった]皆、キンの方を見る。カ[何だと、、] キ[あの男は昨日のコストさんの部下だ、3人の内、最後の奴だ] ヒ[それって、、] シ[まさか負けた腹いせじゃないだろうな]皆、後ろを見るとウラグの姿はなかった。シ[あの野郎〜] カ[奴の事はどうでもいい] キ[あぁ] ヒ[私が聞いた話だと精霊の試練は珠の中心の淡い光が消えたら終わりだって]見ると中心が淡く光っている。シ[俺も聞いたことがある大体3、4日で光が消えるらしい] カ[なら俺達がやるのはユリが戻って来るまで待つ事だな] キ[あぁ] シ[飯と便所、済ましておくか] カ[朝食は食べただろうが水と食料の確保が先だ] シ[緊張し過ぎて少し腹減ったんだよ] カ[キンはこの場で待機、俺とシン、ヒロで水と食料を調達してくる] キ[あぁ頼む] ヒ[えぇ任せて]カズ達は試練の間を後にした。ヒ[まず水は城だから何処か井戸ある筈、食料は厨房で貰うか買うかしましょう]その時、巡回の兵に呼び止められる。兵[待て動くな、お前達、何者だ] ヒ[丁度良かった、カズあれ見せて] カ[あれ?、、あぁあれか]革袋から試練の許可証を見せる。兵[紛れもなくガスト隊長の印、失礼しました]敬礼をする兵。ヒ[いえいえ、少しお聞きしたいのですが試練中、仲間を待つ間の食料と水を頂きたいのですが場所を、教えてくれませんか]笑顔で話す。シ[(流石、商人の娘、、丁寧な話し方だ、俺らの時と違う)]兵から場所を聞き、まず厨房に行き許可証を見せ食料を無料で分けて貰った。ヒ[ありがとうございます]深く頭を下げる。ヒ[ほら、あんた達も]食料の箱を抱えつつ頭を下げる。カ、シ[ありがとうございます] 料理長[試練、頑張れよ~]体格の良い料理長に応援して貰った。ヒ[キンちゃんの所に置いて次は水ね] カ、シ[了解]試練の間に戻る途中シンが立ち止まる。シ[ここが便所か、、悪いちょっと行ってくる] カ[俺も]箱を置き中に入る、カズ達が戻って来るとヒロが言う。ヒ[私もするから少し待ってね]用を済ませ戻る。ヒ[お待たせ]試練の間に戻るのだった。キンは直立不動の状態で珠の前に立っていた。ヒ[食料は確保したわ]3人で持ってきた箱を奥に置く。ヒ[次は水なんだけどキンちゃんもお願い、水は重いから4人で2〜3往復しないと]今のキンはユリが心配だったが水運びは手伝ってくれた。ヒ[ユリが心配なのにごめんね] キ[いや、こっちこそすまない、かなり取り乱したな] ヒ[ううん、あんな事されたら私だって怒るよ] シ[そ〜いやキンの本気、食らってよく立てたな] カ[あぁそうだな、、流石コストさんの部下って事か]その話を聞いてヒロは嫌な予感がした風の知らせとても言うのか。ヒ[皆、急いで水の往復をしましょ]ヒロの真剣な表情にカズ達は返事してヒロを先頭に井戸に急ぐのだった、、、カ[これで最後っと]大きな瓶に水を入れる。ヒ[こっちが飲み水、こっちが生活用水ね] カ、キ、シ[了解]5日分くらいの水が確保できた。カ[後はユリを待つだけ、、]試練の間の外が騒がしくなってきた暫くすると扉の外から声が聞こえてきた。10番隊長[暴漢共、大人しく投降しろ、さもなくば突撃を開始する]扉に近寄りカズは言う。カ[ど〜いう事だ俺達はコストさんに許可証を貰っている] 隊長[それは聞いている、しかしウラグ1番隊副長を瀕死の状態まで暴行を加えるとは言語道断、半刻半、待ってやる投降しろ]カズは皆の所に戻る。カ[聞こえたか] シ[あぁやられたな] キ[俺が1人で戦ってくる] カ[あほ、城の兵士、全員はお前でも死ぬ] ヒ[ヒロ、作戦よろしく] ヒ[もう仕方ないわね]ヒロは辺りを見回し珠の位置、部屋の広さを見て少し考え言う。ヒ[まず珠は相手も私達も壊す訳にはいかないでしょう、おそらくだけど、だから一気に大勢で来ることはないわ、私達はあのウラグって人に謝るつもりはないし牢獄に入れられるつもりもない、だから皆でユリを待ちましょう、槍のシンを先頭に両側はキンちゃん、カズお願い私は最後尾で皆を手助けするわ]弓を掲げる。カ[了解]刀を掲げる。シ[おう]槍を掲げる。キ[あぁ]斧を掲げる。ヒ[皆んな、、頑張って]カズ達は配置に着く。シ[カズ] カ[何だ] シ[俺が討ち損ねたのは頼む、ヒロには近付けさせるな] キ[しっかり守れよ] カ[あぁお前ら、わかってると思うが殺すなよ] シ[わかってるって] キ[あぁ]ヒロは荷物の中から矢筒を取り出す。ヒ[(用意してて良かった、、私も頑張るよ、人に撃った事ないけど皆んなを守る為に)]ヒロは覚悟を決める。隊長[刻限だ突撃する] 副隊長[隊長、ここは試練の間、中には宝珠があります、中の広さを見て攻める人数を決めた方がよろしいかと] 隊長[そうだった]隊長が扉を開け中に入るとカズ達4人が構えていた。隊長[(あくまで抵抗する気か、、)]部屋を見回し指示する。隊長[12人ずつ入って1人に3人で当たれ、それと宝珠には気を付けろ壊すなよ全員の首が飛ぶからな] 兵[はっ] 隊長[かかれ〜〜]隊長が号令を掛ける。シ[気合い入れろよ] カ[おう]キンは無言だったが誰よりも気合いが入っているだろう、此処はユリが帰って来る場所なのだから、、、1刻程(1時間)過ぎただろうか副隊長を含め99人が部屋の隅や外で倒れたり負傷して座っている。隊長[馬鹿な、、たった4人に99人の兵が、、] カ[後は、あんただけだぜ]軽く息切れをしているカズ、シンはカズより多めに息切れをし、キンはほぼ息切れをしていなかった。シ[お前ら〜、、えぇ、、俺の体力がね〜の] キ[走り込みを増やせ] カ[階段の昇り降りも良いぞ]呑気に会話するカズ達。隊長[隊長を舐めるなよ]剣を構える。キ[俺がやる、お前ら休んでいろ] カ、シ[あいよ]座り込む2人。ヒ[はい、お水] シ[おっ気が利くね〜ありがとよ] カ[すまん、ありがとう] ヒ[うん]ヒロもカズ達の近くに座る。カ[ヒロにそんな特技があったなんて知らなかったな] シ[俺も] ヒ[街じゃ使う事ないからね獣対策の護身用だよ] シ[あ〜そうか他の街まで行く事あるもんな] カ[けどあの技量、毎日、練習してるんだろ?] ヒ[うん] キ[(あいつら、こっちは戦闘中なのに何故、日常会話をしているんだ)] 隊長[この若造共、馬鹿にしよって]上段に構えキンに斬りかかる、そこに斧を投げつけた。隊長[なんの]剣で払いのけた瞬間と同時にキンの体当たりを食らって吹っ飛ぶ。隊長[ぐあっ]直ぐに斧を拾い隊長の首元に当てる。キ[勝負ありだ] 隊長[殺せ]怒りと共にキンを睨みつける。キ[断る、兵を連れて帰ってくれ] 隊長[お前達の目的は何だ] キ[仲間を待っているだけだ、1つ言っておくが、もしユリが戻らない場合、命に代えてもウラグって奴を殺す絶対にだ]いつもと違う怒りと憎悪の籠もった声で言う、そこへカズ達がやって来た。カ[隊長さん、コストさんと話がしたいと伝えてくれませんか?] 隊長[ガスト隊長は今朝から部下の要望で山へ訓練するとの事だ] ヒ[また、やられたわね、、引き離されたわ] シ[用意周到だな] 隊長[我らが引いても別の部隊が昼夜問わず攻めに来るぞ、逃げるなら今のうちだ] ヒ[心配してくれてありがとうです隊長さん、それでも私達は待ちます] キ[あぁ]ヒロから水を受け取るキン。隊長[我らは10番隊、後は1〜9部隊、数字が上がるにつれ強さも上がる、それだけは教えておく]隊長は立ち上がり兵に指示を出す。隊長[動ける者は動けない者に手を貸してやれ、死傷者、重傷者は手車に乗せろ] 兵[報告、死傷者、重傷者は無し、動けない者もおりません、しかし手、手首、腕、胴をやられております] 隊長[わかった、全員、救護室へ行け] 兵[はっ]敬礼をして兵は撤退の手伝いをする。隊長[死者は無し、、か]振り向かず言う。隊長[3番、4番隊長と兵達は別格だ、気を付けろ]隊長は部隊を率いて去っていく。ヒ[隊長、良い人だったかも] カ[あぁ俺達が、はめられた事がわかってくれたのかもしれん] シ[さて次が来る前に色々、済ませておきますか] キ[そうだな] カ[キン、便所はそこ出て右だ]カズ達は少し休憩するのだった。[カード、パチン]部屋の扉を叩く音がする。カード・ギャンブ[入れ]巨躯の男が入ってくる。パチン・スロット[聞いたか?たった4人で10番隊100人、撤退だってよ] ギ[今しがた聞いた所です、10番隊は新兵が多い、私達の出番はないでしょう] ス[俺は来て欲しいけどね〜はははっ] 笑う声が夕暮れに響いていた[終] [175日] 昼頃、剣撃の音が響くキンが6番隊長の弾き飛ばす。6隊長[くっ、、、参った]両手を挙げる、昨日と今日で500人の相手をしているカズ達、流石に限界がきていた。キ[次は5番隊か、、残り半分だな]片膝を付きながら呟く、シンとカズはもう寝転がっていた、ヒロは気丈に振る舞っているが無理をしているのがわかる。扉を開け巨躯の男が入って来た、キンより少し大きい男だった。ス[よぉ邪魔するぜ] キ[(くっ、、もう次の部隊が、、)]斧を持って立ち上がる、カズ達も既に構えていた。ス[おいおい慌てなさんな]戦闘の意思はないと両手を挙げる。ス[思った通り皆、いい面構えだ]にこやかに言うスロット。キ[何の用だ、出来れば仲間が戻って来るまで放っておいて欲しいのだが、、] ス[そりゃ〜無理ってもんよ、こっちは500人やられているんだぜ] ヒ[そっちが勝手に攻めて来てるんじゃない]怒るヒロ。ス[お嬢さん、綺麗な顔が台無しだぜ、そう怒りなさんな、そんな君達に良い話だ、明後日、俺と3番隊長、そっちは2名の真剣勝負しよ〜じゃね〜か] キ[それに勝てばもう放っておいてくれるのか?] ス[話が早い、あぁ約束しよう3番、4番隊長の名にかけて] キ[いいだろう] ス[そっちが負けたら大人しく投降してもらうぜ、後、戦う奴は死んでも恨みっこ無しだ] ヒ[わかったわ] ス[それじゃあ明後日、使いを寄こす、それまでゆっくり休んでおけ、もう部隊は攻めさせない] カ[あんた名は、、] ス[それは明後日の楽しみにしとけ]振り返り片手を挙げ帰って行く。シ[信用出来るか?] カ[あぁ大丈夫だろ] キ[同感だ]再び寝転がるシンとカズ。キ[明後日は俺とカズいいな] カ[あぁ] シ[俺は、、って言いたいが頼んだぜ] ヒ[食事にして休みましょう、直ぐ準備するわ] カ[わりぃな] ヒ[ううん、明後日、負けたら承知しないんだから] カ[へいへい]食事をしながら警戒していたが見張りすら居ない様だった、食事を終え寝る準備をする。シ[今日はゆっくり眠れそうだな]体を拭きながら話す。カ[昨日、今日で500人って初めてじゃね〜か] キ[あぁ、、しかし正直、限界だったな俺はまだいけたが] カ[俺は後200人はいけてます〜] シ[俺も俺も]仕切りの中でヒロも体を拭いている。ヒ[カズとシンは、へとへとだったじゃない] カ[あれは演技です〜] シ[そうそう敵を油断させる演技] ヒ[そんな演技して、どうすんのよ]呆れるヒロ。キ[ヒロ、良い援護だった、あれがなかったらもっと苦戦してた筈だ] ヒ[うん、、そう言ってくれて、ありがと]少し声の元気が下がった。カ[(やはり本心では人を撃ちたくなかったんだろう)]ヒロは頭を狙わず腕、足、のみ当てていた。シ[さて便所、行って寝るとしますか] キ[俺とシンで先に、後でカズとヒロだ、一応な] カ[あぁ]キン達が戻り次はカズ達が行く、用を終え試練の間に戻る途中カズが言う。カ[ヒロ、すまない、、人を撃つの辛かったろう] ヒ[、、うん、、でもカズ達を守る為だもん覚悟は決めてた]悲しい表情をする。カ[ヒロ、、] ヒ[これからも私は戦うよ、だから気にしないで、、ね]微笑むヒロにカズは何も言えなかった、試練の間に戻り無事、何事も無く眠るのだった。[スロット、ギャンブ] ヨ[探したぞ、パチン隊長] ス[これは、これはヨウジ副隊長さん]城の廊下で相対する。ヨ[何故、兵を止めた次の部隊で捕らえる事が出来た筈だ] ス[どうかな、2人は元気な奴がいたぜ] ヨ[そんな事はどうでもいい、何故、止めたかと聞いているんだ] ス[簡単な理由さ、あんたの権限で動かせるのは6番までだ兵達に聞いた話では、あんたに騙されたって話だぜ] ヨ[何の事だ]少し焦りが出る。ス[試練の間に案内したのは、あんただって事、正規の案内人じゃなくてな]ウラグの後ろに気配なく背後に立つカード。ギ[そして知っていた説明もせず本来、受ける筈のない者が精霊界に行ってしまった事]ウラグの顔に汗が出てくる。ス[そしてその発端は3体1で負けた事] ギ[更に負けた2人をガスト隊長と共に訓練に行かせた事]次々に明かされる仕組んだ事柄、全てがばれてしまった。ヨ[これにて失礼する]顔を真っ赤にしてその場を去るウラグ。ヨ[(おのれ〜あの5人組め〜この屈辱は忘れんぞ)]またしても怒りの矛先はカズ達に向いてしまった、背中を見送りながらスロットは呟く。ス[まぁあんたのお陰で極上の相手と戦えるのは感謝するわ]そして決戦の明後日を迎えるのだった[終] [174日] 昼頃、微睡みの中、目が覚める。ヒ[おはようカズ]カズは直ぐに起きて辺りを見回す、キンは起きていて宝珠の前で座禅をしていた、シンはまだ寝ている、ヒロは昼食の用意をしていた。ヒ[よく眠っていたわね、ふふっ私もさっき起きたばかりよ]昨日の疲労のせいだろう半日も眠っていた。カ[ふぅ~(そうだった決闘は明日だった)]深く息を吐くと便所に行き顔を洗ってキンの所へ行く、珠の中心は淡く光っているユリも頑張っているのだろう。ヒ[そろそろ昼ごはん出来るからシンを起こして] カ[あいよ]シンを起こし昼食にする。シ[ぐぅぅ~体が痛い、、筋肉痛だ] カ[今日1日ゆっくりすれば治るさ] キ[シンは中心だったからな、相手も多かった筈だ] シ[わかってくれてたか]満面の笑みをする。シ[それで今日はどうするんだ?] カ[どうもこうもユリを待つ、今日か明日、答えが出るだろう]視線を落とし少し悲しそうな顔をする、不本意な形で死地に送ってしまったからだ。ヒ[カズ、、] キ[お前達、武器の手入れをしとけよ] カ[おう] シ[あいよ]キンの斧もシンの槍も流石に刃こぼれが多数あった。シ[結構、持ったがそろそろ替えどきか] キ[俺もだ]研ぎながら話す。シ[カズの刀、本当に凄いよな俺も欲しいよ] カ[父さんから継いだからな、空から星が落ちてきた物らしい、素材が違うから仕方ない] キ[リーツさんから聞いた事がある、リーツさんも親父さんから受け継いだって確かカズで5代目になる筈だ] カ[手入れ終わりっと]軽く汚れを落とすだけで終わる、刀には刃こぼれ、傷の1つも無い。カ[軽めに訓練して明日に備えますかな]素振りを始める、シンとキンは研ぎ続けるのだった、、、夕食を終え後は眠るだけ明日は万全の状態で行けるだろう。キ[相手は相当の手練れ、歴戦の戦士だろう、だが俺達も人の倍、戦ったり訓練してきた勝機を見落とすなよ]拳をカズの前に出す。カ[あぁこんな所で負けてたら到底、奴には勝てない]黒衣の剣士を思い出す、そして傍らの銀髪の女性、キンの拳に拳を合わせる、宝珠はまだ淡く輝いていた。[173日] 朝、ヒロは朝食の用意を、シンはまだ寝ている。カ[999、1000、、、ふひ〜]素振りを終えるカズ、しかしキンはまだ続けていた。キ[1100、、] カ[キアータさん、あまり無理すると疲れが出て昼の決闘に差し支えますわよ、おほほ] キ[俺の事より自分の事に専念しろ]かちんっときたカズ。カ[よく言った、負けた奴は街、滞在中10回、飯奢りだ] キ[いいだろう、厨房で泣きながら皿洗いしてる姿が目に浮かぶ]また、かちんっときたカズ。カ[ほぅ奇遇だな俺は食堂で床磨きしてる、お前が浮かんだぜ]睨み合うカズとキン。ヒ[はいはい、馬鹿言ってないで朝食にしましょう、シンを起こして] カ[へいへい]体を拭きながら言う。カ[約束だぜ] キ[あぁ今から楽しみだ] カ[(本気で高級な飯、頼んでやるからな)]そう誓うのだった。食事を終えヒロ、シンを交え精神統一をして決闘の刻を待った、そろそろ昼過ぎになると扉を叩く音がした。女官[試練の皆様、お迎えにあがりました、広場まで、ご案内させて頂きます]皆、少し緊張する。カ[さぁ行くか]刀を手に取り立ち上がる。シ[よっこらせ]槍を取りキンは無言で斧を取り立ち上がる、ヒロは既に用意は終わっていた。女官[でわ、こちらに]歩き始める、キンは振り返り珠を見る。キ[(ユリ、、)]珠はまだ淡く光っていた。広場に着くと大勢の兵達が周りを取り囲んでいた、女官が立ち止まる。女官[ここからは皆様で、お進み下さい、ご武運を]軽く一礼する。カ[案内ありがとう]礼を言って広場の中心に進む。スロット、そしてその横にもう1人いる、それがキンの相手だろう。ス[よぉ体調は万全か?]気さくに話かけてくる。カ[お陰様で] ス[いや〜決闘が楽しみでさ、さぁ、、始めるか]顔が戦士の表情となる。キ[ヒロ、シン下がるぞ]3人は下がる。ス[4番隊、隊長パチン・スロット] カ[ツミト・カズ]互いに名乗る。ス[お前さん、人を殺した事があるかい?]武器を構える、両手持ちの剣だ。カ[ある]刀を構える。ヒ[(、、カズ)] ス[殺す気でこいよ、でないと死ぬぜ、なぁに俺が死んでも誰も文句は言わさん安心しろ] カ[もとより、そのつもり迷いはない] ス[そうかよ(良い目だ)]先に仕掛けるスロット、横薙ぎから連撃をしてくる。カ[(一撃、一撃が重い、、速さは俺か)]スロットの攻撃を捌きながら隙を探る、上段を避けその隙を斬りかかるカズ、しかし直ぐに前蹴りが飛んできた、寸でのところで躱し距離を取る。ス[おぉっと、やるね] カ[蹴りも有りか、、厄介だな] ス[今の凌いだのは隊長とギャンブだけだぜ、お前で3人目だ] カ[そりゃどうも]呼吸を整え次はカズから仕掛けた、上段から始まり反撃をさせる隙も無い程、攻め立てる。ス[ぬぅ〜]段々と捌ききれない速さになっていく、カズが渾身の突きを放つ。ス[ぬぅりゃ〜]それを振り払い刀を弾く。ス[もらったぁぁ]上段から振り下ろす瞬間、回転の終えたカズに腹を斬り裂かれた。ス[なっ、、んだと、、]両手剣を上げたまま直ぐに斬り裂かれた要因を探る、至極単純な答えだった、突きの囮にまんまと引っ掛かったのだ。カ[動くな勝負ありだ] ス[まだ、終わっちゃいね〜]再び上段から振り下ろす。ス[うりゃあ〜]決死の一撃、しかしカズは躱し右斜めに振り下ろす、舞い散る血の雨、決着は着いた。苦しそうだが満足気な顔のスロット。ス[負け、、だ、ふふっ楽しかったぜ、、勝てば、もっと楽しかった、、がな] カ[俺は、あんたみたいな良い人、斬って、殺して、楽しい訳ないだろう]大声で怒鳴る、カズは怒っていた。ス[(良い、、人か、くくくっ)そいつは、、すま、、ね〜な、、]スロットは立ったまま死んだ、しかしその顔は笑っていた、いつの間にかカズの隣にギャンブの姿があった。ギ[スロット、、満足した顔で逝きましたね]悲しくも嬉しそうな声だった。ギ[4番隊、スロット隊長を丁重に丁寧に運びなさい]直ぐに兵達が駆け付けスロットを運ぶ。カ[あんたの友か?] ギ[友であり、戦友であり、好敵手でした] カ[そうか、、仇討ちなら明日から受け付けるぜ] ギ[ふふっ貴方は面白い人ですね、そんな気はありません、正々堂々真剣勝負なのですから]真剣な顔でカズに聞く。ギ[私と戦う人は貴方の友ですか?]少し考え言う。カ[いや、、敵だな] ギ[はっははは〜]突然、大笑いするギャンブ。カ[どうした急に]驚くカズ。ギ[失礼、、こんなに笑ったのは久々です、くくくっ、、さてと始めますかな] カ[奴は強いぜ、頑張りな]カズは下がろうとするとギャンブが言う。ギ[仇討ちは明日から受け付けますよ]にやりと笑う。カ[そうかい、覚えておくよ]皆の所に戻るカズ。シ[お疲れさん] ヒ[良かった、無事で、、] キ[飯の奢りは引き分けか、、はぁ〜]残念そうに言いながら深い溜息を吐く。カ[、、全力でいけよ] キ[わかっている]キンは両手に鉄甲を付けていた。カ[お前、斧で行かないのか] キ[あぁ俺は奴を見ていたカズの隣にいた時、外套の隙間から見えた、片手斧二刀使い、この方が良いと判断した] カ[そうか、、頑張れよ] ヒ[キンちゃんも無事で帰ってきてね] シ[お前が負けるなんて思ってね〜からな]シンも相手の強さを感じているらしい。カ[んじゃ行ってこい] キ[あぁ]相手の所まで進む。ギャ[友との別れは済みましたかな] キ[お気遣い感謝する、俺の名はキアータ・キン]素手で構える。外套を放り投げ名乗る。ギャ[3番隊、隊長カード・ギャンブ]両手に片手斧を構える、張り詰めた空気、広場が静かになる。ギャ[いざ参る]一瞬で間合いを詰め両手の斧で凄まじい乱撃を繰り出す、キンは鉄甲で捌いている、しかし捌ききれないのか体中に切り傷が出来る、半刻半(15分)は過ぎただろう。シ[くそっ、、俺だったらもう死んでいた]悔しそうに呟く。カ[俺もだ、、乱撃に持ち込まれたら死んでいた、、奴に勝つには、そうなる前に斬り伏せるしかない]しかしキンは既に乱撃状態にある。ギャ[(強いな、、この男、スロットも、あの隊長でさえも私の乱撃には耐えられなったのに)]キンの体はもう血だらけになっている、それでも乱撃は止まらない、相手の命を絶つまでは止まらないのだ、見ている兵達やカズ達はそう思っていた、その時、嵐の様な乱撃は止まった、キンが2つの片手斧をしっかり掴んでいた。キ[ぬぅ〜ん]ギャンブを引き寄せ渾身の頭突きを食らわす。ギャ[がぁっ]たまらず斧を離すギャンブ、キンはすかさず斧を拾いギャンブの首元に当てる。キ[俺の勝ちだ、、] ギャ[殺しなさい] キ[断る]流石のキンも立っているのがやっとだった。キ[あんたが後10年、、いや5年、若かったら死んでいたのは俺かもしれん、、この勝負、公平じゃなかったかもしれんな] ギャ[くくくっ、、わははは、この私と戦って、私は不利だったって事ですか、、ははっあの人も面白かったが貴方も面白い人ですね] キ[俺は冗談は言わない] ギャ[わかりました、この勝負、貴方の勝ちです、ふふっ年は取りたくないもんですね]鼻血を出しながら笑う。キ[(あんたも充分、面白いぞ)]そう思ったが口が裂けても言えなかった。ギャ[この決闘、私達の負けです納得するまで待つといいでしょう、兵には手出しさせません] キ[あぁ] ヒ[キンちゃん]ヒロ達が走ってきた、服はぼろぼろの血だらけの凄い状態だった。ヒ[キンちゃん座って、カズ、シン、キンちゃんの体拭いて血止め薬を塗って、私は塗った所から包帯を巻いていくわ] カ[あぁ] シ[おう]その時、声が聞こえてきた。ヨ[まさか3番、4番隊長が負けるとは思いませんでした]こちらに歩いてきたのはウラグだった。ギャ[何の用です、1番隊、副隊長殿、もう戦いは終わりました、貴方の出る幕はない]ウラグを睨みつける。ヨ[貴方達が負けたから私が出る羽目になったんですよ]1枚の紙を見せる。ギャ[なっ、、本物だ、、(しかしガスト隊長は山へ訓練、、ど〜いう事だ)]紙の内容は全兵士の指揮権命令書だった。ヨ[わかって頂けましたかな、この者達を牢へ捕らえろ(奴らを拷問した後、目の前で女を犯してやるか)くくくっ]醜悪な笑みのウラグ。シ[カズ、ヒロ此処は任せろ、キンの処置が終わったら何処か身を隠せ]槍を持ち立ち上がる。カ[お前、、]周りは兵だらけ逃げるのは困難だろう。ヒ[カズ、シンの決断、無駄にしないで急いで] カ[あぁ、、シン生きろ、捕まっても生きろ俺達が必ず] シ[あぁ信じてるさ、その時は頼むぜ]笑顔で言うシン、カズ達にウラグが連れてきた兵が向かってくる。シ[ミヤト・シン参る]シンが前に出る、その時1番前の兵が吹っ飛んだ。兵[ぐはぁ]兵達は止まる、シンの前に立ったのはギャンブだった。ヨ[何をしているのです反逆罪ですよ] ギャ[この者達と約束しましてね、パチン、カードの名において私達に勝ったら安全は保障すると(スロット、お前なら必ずこうしてた筈だ)] シ[おっさん、、あんた、いいのか?] ギャ[こちらこそ申し訳ない、私はカード・ギャンブ] シ[ミヤト・シン]互いに名乗る。ギ[1番隊は個々の強さ連携はこの国、最強です、見たところ100名はいますね、頼りにしてます、ミヤトさん] シ[シンで良いよカードさん(キンの奴そんな連中を速攻で倒したのか)] 3番隊兵達[隊長、ご命令を]3番兵達が叫ぶ。ギ[3番、4番、並びに各隊待機、同じ国の兵同士が戦ってどうする、それに貴方達を反逆者にする訳にはいきません願いを聞いて下さい、反逆者は私だけです] 3番兵達[隊長、、]各隊隊長と兵達が一斉に敬礼する。兵達[了解]この行動でどれだけスロットとギャンブが兵達に慕われているかがわかる。ヨ[ちっ再度命ずるカード・ギャンブは自ら反逆者と認めた殺せ、他の4人は捕らえろ、かかれ〜]連れてきた1番隊だけがギャンブとシンに再度挑む。ギ[来ます、シンさん出来れば殺さずにして頂けたらありがたい] シ[わかった]その返答に驚いたギャンブ。ギ[、、、ありがとう(自分達の命が懸かっているのに、、最後に素晴らしい若者達に会えて良かった)]この命に代えても守る決意と共に斧を振るうのだった、、、シ[はぁはぁ、、(もう、腕が、、)] ギ[もう年ですな〜流石に厳しいですね]なんと最強の兵を2人で40名は撤退させていた。[カズ、キン、ヒロ] カ[ヒロ、、] ヒ[うん、わかってる]シン達と離れた場所でキンの処置は終わった、後は隠れるだけだった。ヒ[言うと思ってた、カズはそ〜ゆう人だもん]悲しそうな表情をする。カ[キン、傷が癒えたら頼むわ] キ[あぁ必ず] カ[じゃあ行ってくる]シン達の元へ走る、あっという間に走り去った。ヒ[カズ、、(死なないで)]祈る気持ちで目を閉じる。ヒ[さぁ行きましょう、キンちゃん] キ[すまん]そこへ10名の兵がヒロ達を取り囲んだ。兵1[副隊長の言う通り2人になったな、1人は手負い1人は女、、観念しろ] キ[馬鹿だと思ってたが間抜けではなかったか]思案するキン。ヒ[キンちゃん、、] キ[少しでも長く生きる方を選ぼう、まだ希望はある] ヒ[うん、わかった]キン達は大人しく捕らえられるのだった[終] 兵を吹っ飛ばしシン達に合流するカズ。カ[シン、もうへとへとか?] シ[なっ、お前なんで、、] ギ[申し訳ない約束を果たせずに] カ[いえ、貴方のせいじゃありません]刀を構える。ギ[出来れば殺さずに願いたい] カ[了解]カズも快く了承する。ギ[(こんな時なのに嬉しくて笑みが込み上げるじゃありませんか)]兵が向かってくる。カ[来ます] ギ[えぇ(この命、燃え尽きるまで)] シ[おおよ]気合いを入れ直すギャンブとシン、カズを交えた乱戦が始まった。カズが参戦してから更に50名は撤退させた、もう3人共、限界を超えていた。シンの槍が弾かれそこへ脇腹に横薙ぎを食らう。シ[ぐぅあ]膝を付いたところ頭を掴まれ地面に抑えつけられた。カ、ギ[シン]注意が向いた隙に背後から刺されるギャンブ。ギ[があっ]追い討ちに他の兵2名に両脇腹を刺される。ギ[ぐっぅぅ]左手から斧が落ちる。カ[カードさん]ギャンブの方に視線をやった瞬間、みぞおちを突かれ足払いを食らい倒れたところを頭を掴まれ地面に抑えつけられた。カ[ぐぅぅ]一瞬の隙を逃さず、あっという間に制圧されてしまった。ギ[(ここまでか、、せめて、せめて奴だけでも)]大きく息を吸い最後の力を振り絞り貫かれた箇所から血が噴き出る。ギ[はあぁぁ]気合い一閃、片手斧をウラグの顔面へと投げる、凄まじい速さで回転しながらウラグの左肩と左耳を切り裂いた。ヨ[うあぁぁ~私の耳と肩がぁぁ~]地面をのたうち回るウラグ、兵達は動けないでいた。ギ[無念、、外れましたか、、貴方達に辛い思いを、、させてしまい、、そうです、本当に、、申し訳、ない]口から血が流れる。カ[最後まで命を賭して約束を守らんとした貴方を心から敬意こそすれ恨みはしない] シ[俺も同じだ、あんたの名は忘れない一緒に戦えて光栄だった]ギャンブの目から涙が流れていた嬉し涙なのかわからなかったが、ギャンブの心が軽くなっていた。ギ[あり、、がとう]空を仰ぐと、なんと人が空から落ちてきたギャンブの近くで着地する、ギャンブの目に最後に映ったのは青く光輝く髪の綺麗な少女だった。ギ[(美しい、、これが精霊の加護を受けた人間なのか、、スロットに良い土産話が出来ましたし安心しました)]ギャンブは少女に言う。ギ[後は、、どうか、、、]膝から崩れ落ち倒れる、ギャンブも微笑みながら逝くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます