第9話 之より三役揃い踏み


 逮捕された筈の変態坊主が警察署を脱走したと聞かされたモモは、授業など頭に入るわけが無かった


 ずっとオデコがムズムズする


 ( 駄目だぁイライラが止まらない …… )


 万が一、学校内で角が生えたりしては一大事だ

 昼休憩時間になり、カナと裕也が一緒に弁当食べようと声を掛けてくれたが、とてもじゃ無いが食欲が沸かなかった


「早退しよっかな …… 」


「いや待て、独りで帰らせるのは拙くないか?俺とカナで送ってくよ」

「えぇ~裕也ん家、反対方向じゃん?悪いよ」


「なに遠慮してんの?独りで帰って、また坊主に狙われたらヤバいじゃん」

「う〜ん、でも授業も上の空だしなぁ …… 何にも頭が働かない」


 テスト週間も近いのに、まったくはた迷惑な話しだ


「日ノ本君は居るかい?」

「モモ〜、お客さん」


 呼ばれて振り向けば、3年生の先輩がクラスにやって来た

日ノ本 桃華ヒノモト トウカさん?」


「はい」


「話しは聞いてるよ、僕は3年A組の雉原 楽人キジハラ ガクト。生徒会長をやらせて貰っている」


 入学式でも見掛けた派手な銀髪は忘れようにも忘れられない

 中々にイケメンだ

 眉目秀麗ってのは、こういう人の為にある言葉だろうな …… クラス中の女子が皆、先輩に見惚れてる


 って言うか、カナは見惚れちゃ駄目だよ

 裕也が居るのに


「学生の安全を護るのも生徒会の務めだからね、僕が帰りに送って行こう」

 前髪を指に絡めながらカッコ付けてる

 正直キモい …… 見た目に中身が釣り合って無い


 3年生って事は、この人このまま大人に成るのか …


 断っちゃ駄目だろうか?と言う目線をカナに送ると、すかさずカナが断りを入れてくれた

 流石、心の友♡


「あっ、今日は私と犬童君とで送るから大丈夫でーすっ♪」


「えっ?そうなの?」


 断られるとは思って無かったらしいガクト先輩は言葉に詰まる


「こ、こう見えても僕は空手2段だからねっ、頼ってくれて良いんだよ?」

「なんだよ、俺だって剣道2段だぜ?って言うか高校生は2段止まりだろ」

「ほう、1年の癖に2段とは …… さては早生まれだな?」


 日本の武道は年齢による段位制限が有って、如何に卓越した技量を有していても、規定を超えた段位を認定される事は無い


「俺が3年になったら、即3段に上がってやるから、アンタを超えてるぜ♪」

「ぐぬぬ …… 」


 男子って、何でこんな下らない事でいがみ合えるんだろう?


 まぁ、わざわざ面倒事に顔突っ込みたがるなんて、生徒会って案外暇なのかしら?


「貴様、名を聞いておいてやる、有り難く思い給え」

「何で俺が有り難がらなきゃならねえのか分からんが、俺の名は犬童 裕也イヌドウ ユウヤだ覚えとけ」


「ふっ、良いだろう。一度異種格闘技と言う物をやってみたいと思っていたのだよ」

「ちょっと!」

「あ痛たたた!耳を引っ張ったら痛いじゃないか日向子君!?」


 ガクト先輩が不穏な発言をしたところで、随伴していた女生徒が先輩の耳を思い切り引っ張った


「何が異種格闘技ですか!怪我でもさせて連盟にバレたりしたら除名されますよ?」

「いや、それはほら … 男のロマン?」

「ちょっと待て?今、俺が負ける体で話してなかったか?」


「何が男のロマンですか、アホな事言ってないで、ちゃんと仕事して下さい」

 イケメン生徒会長を手玉に取るこの女生徒は何者?


「ウチのアホが失礼しました。それは兎も角、日ノ本さんの登下校の安全対策はマジな話しなんですよ?とはいえ、まぁ最寄り駅までですけど …… ?」


「えーと …… ?」

「失礼、私は生徒会副会長兼風紀委員長を務めております猿渡 日向子サワタリ ヒナコと申します」


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る