第7話 脱走


 校門前で警察の事情聴取を受けた後、とっくに授業が始まっている学校へと入ったら、今度はそのまま校長室へと連行された


 アタシは何も悪く無いのに、全校生徒の注目を浴びてしまう

 許すまじ変態坊主!


 校長と教頭に事情を説明していると、祖父がやって来た

「遅くなり申し訳ありません」


「いやいや、お孫さんは災難でした、今日の処は被害者として遅刻扱いには為りませんので、ご安心下さい」

 予鈴前にちゃんと学校には着いてたのに、変態坊主のお陰で1限目に間に合わなかった

 先にクラスへ戻ったカナと裕也も、遅刻扱いにはされなかったけど、迷惑かけちゃったな


「て言うか、何でじいじが来たの?」

「お前が襲われたって連絡受けて、とんで来たのに、何てぇ言い草だ」


「まあまあ、幸い未遂で終わりましたから」

「昨日は自宅へも現れたとか伺いましたが、大丈夫だったのですか?」


「うぅ~、あまり思い出したく無いので、放って置いて下さい …… 」


 校長先生はそれ以上追求する事を止めてくれて、アタシはやっと教室へと戻る事が許された


 じいじは変態坊主の素性を聞きに警察まで出掛けるらしい


 2時限目の途中で教室にはいると、クラス全員の視線がアタシに集中する

 あぁ〜、嫌だなぁ ……


 あ、ヤバい

 嫌だ嫌だと思ってたら、おでこがムズムズして来た

 学校で角なんか生えたら大変な事になる


 アタシはおでこを押さえながら席に着く


「おかえり〜♪モモ♡」

 斜め後ろの席のカナが声を掛けてくれたお陰で、気持ちがスッと楽になる

 持つべきものは心の友だわ

 とびきりの微笑みを返しておこう♡


「もう良いのかー?日ノ本」

「あ、はい。ご迷惑かけました」


「いやー、悪いのは日ノ本じゃ無くてストーカーだろ、何も無くて何よりだ」


 英語教師は授業の続きに戻るが、後ろの席の裕也がアタシの背中をちょんちょんと突付く


「怪我しなかったか?」

「あっ、うん大丈夫。さっきはありがとうね裕也」


「どうって事無えよ … 」

 裕也は少し照れてノートに目を落とす


「犬童ー私語は慎めー、ここ訳してみろ」

 

「げっ ……『春は曙 … やうやう明るくなるヤマギワ電気は、お近くの店員までお気軽にお声をお掛け下さい』?」


 クスクスと言う小さな忍び笑いが聞こえ、途端にクラス中が大爆笑に湧いた


「はーい、静かにー!今は英語の授業中だぞ?何でお前独りで古文やってんの?」

 キーンコーンカーンコーン♪


 教師の小言の途中でチャイムが鳴り響く

「あー … まぁ良いや。今日はここ迄ー」

 教師が頭をバリバリ掻きながら教室を出て行くと、カナがへばり付いて来るのを筆頭に、クラスメイトがわらわらと集まって来た


「え〜なに?モモちゃんストーカーに狙われたって?」

「恐〜い」

「裕也が助けたんだろ?」

「凄かったな!ドラマみてえで!」

「バカ、それどころじゃ無えだろ」


 なんて事はない、皆ミーハーなだけだ


「止めなよ!日ノ本、迷惑じゃん」

「ホント男子はデリカシーが無いんだから!」


「あはは … 」


「モモちゃん、笑って誤魔化す処じゃ無いよ?嫌な事はハッキリ言わないと、コイツ等分かんないから!」

 カナが優柔不断な態度のアタシを叱ってくれる


 ゴメンね

 心配させて ……


 教室に担任の先生が入って来た


「アレ?先生、まだ放課時間ですよね」

「うん、いや … 日ノ本ちょっと」


「はい?」


 担任に呼ばれて教壇へ向かうと、とんでも無い話しを聞かされた


「例のお前を襲った変質者な …… 」

「はあ」

「警察署から脱走したらしい」


「ええーーーーーっっ!?」

 

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る