---------
空は晴れることはなかった
妹がいなければ食い繋げなかっただろう
これほど運命に感謝したこともない
世の人は皆飢えを凌ぐので必死だった
国すら衰退していった
僅かな食料は高値で取引きされていた
人々は助け合いの心を忘れなかった
たとえ知能が低くても人間にはこれがあったのだ
今日日まで繁殖できたのはやはりこの心が大きい
通常動物は知能と共に残酷性も増す
それを抑え付けるだけの情念があって初めて繁栄できるだろう
自分に欠けていたのはこの心だろうか
それでもまだ人は話さなかった
そんなこんなで世界は平静を取り戻した
このとき初めて気付いたのだ
晴れる空雨粒吹き荒れる風雪その愛おしさに
それでもまだ人は話さなかった
愛=感謝だと思った
それでも人はまだ話さなかった
もう分かっていた
自分に対する感情が欠けていることに
どうしようもなかった
俺は自分が好きだから
ナルシスかまってちゃんに処方箋はなかった
それでも人は話さなかった
もういいかと、他人は捨てようかと考えた
他人がいるから苦しみがあるんだと
そんな風に思った
ぽんぽん
ある意味での正解だニャ
もう喋ってくれるニャ
もうちょっと頑張るニャ
お前ならやれるはずだニャ
無責任なことを言って猫は消えた
しかし世の中は大して変わらなかった
気が紛れて自分はもしかして存在してるのかもしれないと思った程度だ
そして自分の輪郭が再び見えてこようとしていた頃
妹が床に臥せた
これ以上のことはないというぐらい大きな事だった
看病して消えていく自分に気付いた
こいつがいないと何もない、そんな気がした
半年が過ぎた
まだ妹は笑っている
俺も微かにまだ生きている
妹は微笑む
看病されているのはどっちだったのだろう
今までもずっと看られていた気がする
幸い3ヶ月後妹は退院できた
自分の弱さを噛み締めると同時に
人のなんたるかを知った
生活の方はというと多少楽になってた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます