1日目(3)

 予約したホテルの部屋は広くはなかったが、寝に帰ってくるだけと思えば、ベッドは広かったので十分だったと思う。

 翌日の文フリへの移動のために、キャリーケースに入っていた荷物を整理する。

 着替えと化粧品などの会場に必要のないものはさっさと取り出しておく。それでも、重さはさほど変わらない。

 一段落したので、室内にあったインスタントのコーヒーでも飲もうかと、エレベーターホールにあった給水機でポットに水を入れようとした。しかし、ほとんど残っていなかったようで、ポットに少ししか入らなかった。仕方がないのでコーヒーは諦めた。

 給水機で水がない状況は、食後の薬を飲む水もないということ。それは困るので、ホテルの近くにコンビニがないかGoogleで調べた。ついでに翌日の朝、文フリのお昼ご飯を買っていこうとも思ったのだ。

 ありがたいことに、最寄りに一カ所あることに気付いた。


 ――夕食の後、場所の確認のついでに買いに行こう。


 そんなことを思っていたら、時間はそろそろ夕食をとってもいい頃合い。

 今回の予約では朝食付きの宿泊での予約。夕食はどこかに食べに行かねばならない。ホテルに向かう道すがら周辺を見てみると、飲み屋さんの多い繁華街が近かった。

 私もお酒が飲めれば居酒屋にでも入ったところだが、まったく飲まない私には敷居が高い。そんな私の救世主はやよい軒。ホテルの下に入っているやよい軒は、朝食もここで取ることになっていた。


 ――もう、二泊とも夜はやよい軒でもいいかな。


 移動だけで疲れ気味だった私は、そんな気持ちにもなってしまっていた。

 カードキーを手にした私はやよい軒に向かう。ホテル側の入口から入ると、すでにお客さんがあちこちの席に座っている。

 やよい軒自体、利用したことがあるのは一回だけ。食券を買うのか、と慌てて一般の人たちの出入り口そばの券売機へと向かう。この手の券売機は地元のなか卯くらいでしか使ったことがなかったので、迷ってしまった。

 時間が時間ということもあって、新しいお客さんも入ってくる。焦った私は『なす味噌と焼魚の定食』を選んだ。

 なす味噌のイメージは甘めだったのだけれど、予想に反して辛みのある味噌だった。これもありだなと思った。

 食後はそのままホテルを出て、見つけたコンビニへ向かう。途中、ガード下の飲み屋街を目にして、一昔前の新橋や有楽町のガード下を思い出した。

 コンビニで買い物をした後、ちょっとだけ周囲を見て歩いた。

 カレーやオムライスの店があったり、うどん屋さんや居酒屋さんがあったりと、私としては会社員時代を思い出して懐かしい気持ちになった。

 やはり移動や暑さに疲れていたこともあって、すぐにホテルに戻り、お風呂に入って休むことにした。

 

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