第4話 理想と現実の狭間で

東京に着いた俊介は、進学予定の大学を訪れた。春休みのキャンパスは閑散としており、時折見かける学生たちは暗い雰囲気を漂わせていた。彼が思い描いていた『大学生活』とは、まるで違っていた。


「ここで四年間を過ごすのか?」


俊介は、胸の奥に重たい違和感を抱えながら、大学周辺の街を歩いた。古びたアパートが連なる街並みは、昼間にもかかわらず人影がまばらで、どこか寂れていた。彼の理想とする『学生の街』は、そこにはなかった。


(プライドだけは一人前ということは、自分自身が一番わかっていた。こんな街で、僕は耐えられるのか?)


結局、俊介はアパートを決めずに新潟へ帰る電車に乗った。帰宅すると、母親は激怒し、そして号泣した。彼が合格した大学の環境に失望し、進学を拒んだことに、母親は深く傷ついた。


その夜、父親は静かに口を開いた。

「申し訳ない。これ以上、お前の我儘を通してやることはできない。やりたいことがあるなら、自分で働いて金を貯めて、もう一度挑戦するなりしたらどうだ?」


俊介は涙をこらえきれなかった。父親は実家に頭を下げて借金を頼んだが、断られた。一人息子の最後の我儘を聞いてやれないことに、父親は自分の力のなさを悔いていた。


俊介は、五十ccのバイクの免許を取り、二十キロ離れた街でホームセンターのバイトを始めた。だが、雪の日に通勤できず、職場に休みの電話を入れると、「もう来なくていい」と言われた。ローンも払えず、母親に全額肩代わりしてもらった。


父親との同居も耐えられず、俊介は母親に「二十キロ先の街で一人暮らしをしたい」と頼み込んだ。母親は嫌われるのが怖く、二つ返事で了承。俊介は新たな街で暮らし始めたが、生活は堕落していった。バイトよりも立ち飲み屋、パチンコ、そして図書館で出会った女性のアパートに寝泊まりする日々。


俊介は、またしても『逃げる場所』を見つけてしまった。


つづく

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