☆第19話☆ 【聖女の手伝い】



 僕にはわかる。


 この貿易街の魔法図書館には、僕の知らない魔法書が眠っている!


 もちろん根拠はない。でもそんな気がしている。


 そうとなれば早速図書館へ入ろうーー。



「......意外と小さい図書館だな」



 図書館に入ったはいいものの、他の街より明らかに規模が小さい。


 これじゃ本当に僕の知らない魔法書があるのか疑心暗鬼になってくる。


 とりあえず片っ端から覗いていくしかないか。




   ★




 なんとなくそう思っていた。


 そうだと感じていた。


 そんな僕は今、図書館の入り口で跪いている。


「無かった......何も無かった。期待したのに......」


 文字通り、僕の知らない魔法書はなし。


 何も得られるものが無かった。


 三十分もしないで図書館を出るなんて初めてだ。


 それだけ規模が小さいって証拠でもあるか。


 あぁ、どうしよう早速暇になってしまった。


 仰向きで空を見ながら落ち込んでいると、突然視界に一人の女性が入り込んだ。



「ーーーー何してるの?」



 シルヴィアだった。


「図書館に何もなくて黄昏てる。そんな君こそ何してるんだい?」


「私は聖女さんのお手伝いだよ」


「聖女? 何で?」


「小遣い稼ぎだね。ほら私、金銭もなければこの街の門番に通行料を払えなかったでしょ」


 確かに。一文なしってことだから軽く働いてるわけか。


「そっか。頑張ってね〜」


 僕はこのまま黄昏ておくから。


「暇ならあなたもする?」


「え、何をしろって言うの」


 聖女の手伝いか。


 嫌ではないけど、内容によるかな。


「この街の何ヶ所かに防護結界を施す。まぁ弱まった結界を再度構築する作業だね」


「報酬は?」


「金貨三十五枚」


 ーーなるほどやるしかなさそうだ。


「それは二人で分ける?」


「もちろん」


「よしやるよ。でも、なんか報酬多くない?」


 あまりにも不自然だ。結界を施すだけで金貨三十五枚、多すぎる。


「この街じゃ少ない方だね。魔物退治とかなら金貨三百枚くらいはあるだろうし」


「魔物退治した方が儲かるじゃん。なんでそっちしなかったの?」


「あなたは二週間かけて魔物退治に行きたいと思う?」


 あ〜そう言うことね。遠すぎるんだ。


「嫌だね」


「そういうことだから当日報酬が貰える教会の手伝いをしてるんだよ」


「なるほどね。わかった、じゃあ手伝うよ」


「そう。ならこの魔法図書館に施そうか」


 建物に施すのか。街全体にした方がいいような......。


 そうか。


 街が発展すれば、広がったところは結界外になる。


 だから文化を残せる建物を優先しているわけか。


「何ヶ所って言っても、あとどのくらいある?」


「あと四十二ヶ所。場所が多いから魔力量との勝負だね」


「ならササッと終わらせて報酬を貰っちゃいますか」


 暇になった僕は突如聖女の手伝いをすることになった。


 結界を施すだけで金貨が貰えるんだ。やるしかない。


 裏は無さそうだし、信じてもいいか。

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