第11話 茅野と朝練
翌朝。目覚めた俺はカーテンを開けて天気を確認する。分厚い雲がかかり薄暗い。だけど雨は降ってはいなかった。眠い目を擦り、スマホの天気アプリを開く。
――曇りだけど、雨は降らなそうだな。梅雨の時期だから、気休めでしかないけど、まぁ降ったら解散すりゃいいもんな。
そんな事を思いながら、顔を洗い、歯を磨き、黒色のトレーニングウェアに着替える。
――さて、準備はできたし、茅野にメッセージしとくか。
スマホを手にメッセージを送る。
相良龍二:おはよう。今から出る。来れそうなら来てくれればいいから。
しいな:おはよう♪私も準備万端だよ!これから向かうね♪
スマホを机に置く暇もなく既読がつき、返信がきた。俺は返信する事なく、待ち合わせ場所である公園へと向かう。
――そういえば公園のどこか決めてなかったな…。まぁ正門にいれば大丈夫か。合流できなくてもスマホがあるしな。
そんな事を考えつつ、トレーニング用の荷物を持って公園へ向かうのだった。
◇
公園の正門につくと既に茅野は待っていた。
上は青色の長袖ランニングウェア。肌にフィットした作りで妙に生々しい。下は白色のランニングパンツだ。ランニングパンツといっても、ホットパンツのような短さで、俺は普段見ない茅野の新鮮な姿に息をのんでしまった。
「おはよ!どうしたの?変な顔してるよ?」
「いや、ごめん。普段見ない恰好だったから、なんか新鮮でな。すまん」
「あは、なにー?変な事でも考えてたんじゃないの?いつもより色っぽかったりした?」
からかうようにニシシと笑う茅野。
「いや、まぁ、そのなんだ。すまん」
「……。も、もう、否定してよっ!!」
少し頬を染めながらそんな事を言ってきた。俺もいたたまれなくなり、とりあえず朝練の開始を提案する。
「と、とりあえず朝練を始めよう。まずは軽く走るけど、大丈夫か?」
「う、うん。もちろん大丈夫だよ。始めようか!」
俺と茅野は簡単なストレッチをする。練習で怪我をしたら元も子もないからな。
「とりあえず、公園の外周を三周するから、ついてきてくれるか?ペースは合わせる」
「さ、三周?わかった。まかせて」
一瞬びっくりした表情をしたが、さすが剣道全国大会準優勝経験者。すぐに気を取り直して俺の横を並走しだした。ちなみに公園の外周は一周2キロ。三周走れば6キロ走った事になる。
◇
「はぁはぁはぁはぁ」
茅野は息を切らしていた。ちょうど3周を走り終わり、休憩をしていたタイミングだ。俺は慣れてしまったのか、このくらいのペースであれば、そこまで息を切らす事はなくなっていた。
公衆トイレ横に設置してある自動販売機で二人分の飲料を買う。茅野が何を飲みたいのか分からなかったから、とりあえずお茶を買っておいた。俺はスポーツドリンクである。
「ほい、おつかれさん」
座り込んでいる茅野にお茶のペットボトルを渡す。
「おー、さんきゅー!気が利くね♪」
俺はペットボトルのフタを開け、スポーツドリンクを飲む。
「あー、自分だけスポドリじゃーん!ずるっ。私もスポドリがいいよー」
茅野は冗談と分かる声音で、俺に抗議の声をあげてきた。
「ん、どうぞ。飲んでいいよ」
俺は一口飲んだスポーツドリンクのペットボトルを茅野に差し出した。茅野も特に考える事もなく、ペットボトルを受け取り、しばらく固まって顔を真っ赤にさせていた。
「飲まんの?」
「え?飲んでいいの?」
真っ赤な顔で茅野が答える。俺も鈍感ではないので、なんでこんな真っ赤になっているのかは理解できるが、からかい半分で茅野に答える。
「スポドリがいいんだろ?どうぞどうぞ。じゃあお茶は貰うなー」
そう言ってお茶のペットボトルを茅野から取り上げて、すぐさま飲む事にした。
「あっ」
後に引けなくなった茅野は真っ赤な顔をしながら、俺から受け取ったスポーツドリンクのペットボトルを飲む事になるのだった。
「間接キスだな」
俺は意地の悪い笑顔をつくって冗談のつもりで茅野につげると、真っ赤な顔をして怒った茅野にしこたまケツを蹴られるのだった。
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