第8話 はじめまして

練習試合が終わり、俺が休憩にとお茶を飲んでいる時だった。


「相良くん……。ちょっといいかな?」


茅野椎奈に話しかけられた。若干汗ばんで髪が肌に張り付いた彼女は、妙に色っぽかった。制汗剤だろうか、シトラス系の香りが鼻先をくすぐる。


「茅野か。どうした?」


「相良くんさ。こうやってきちんと話すのは初めてだよね?」


「うーん。そうだったか。悪い、あまり覚えてない。じゃあ、はじめまして、だな。」


俺は照れもあって、ぶっきらぼうに答えてしまった。


茅野は冷たく感じる目元とは裏腹に、優しさを感じる笑顔で応えてくれる。


「うん。はじめまして。少し聞きたいことがあるんだけど、いい?」


「おー。俺に答えられることなら、構わないよ」


どうしてもこうもぶっきらぼうになるのか……。


――こんな美人相手じゃ、しょうがねえか。


「なら教えてほしいんだけど、普段どんな練習をしているのかな?あっ、剣道の話なんだけど」


そりゃそうか。数週間でこれだけ腕を上げたら、気になるだろうな……。


「特別なことは何もないよ。朝にランニングと基礎練をして、あとは部活の時間、みんなと同じメニューをこなしてるだけ。まだ朝練は始めて数週間だけどな」


俺は嘘偽りなく答える。


「朝練か……」


茅野は一瞬考え込む。


「もしお願いしたら、私もその朝練に参加することは可能かな?」


まさかの、一緒に練習のお誘いだった。


「構わないよ。ただ、なかなかの早朝だぞ?大丈夫か?」


「大丈夫……だと思う。うん。私も朝はそれなりに早いから」


「そうか。なら構わないぞ。一緒に練習するか」


「お願いしていいかな?じゃあ、せっかくだし連絡先も交換しちゃおうよ?」


茅野から連絡先の交換をお願いされる。まさか、傍観者であるはずの俺が、こんなところでヒロインと接点を持つことになるとは……。


「構わないよ。じゃあ部活終わったら教えるから、部室の前で待ってて。今はスマホも持ってないからな」


「分かった。それじゃあ、また後でね」


ニシシと笑ってウインクした茅野に、俺は少しドキリとした。

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