Chapter 2
ゆっくりと馬車から降り立ち、目の前の光景を見つめる。
天まで届くかのような高い城壁、金色の装飾が施された巨大な黒門。その中世的な外観は、ここが以前の世界ではないという現実を、改めて私に突きつける。
「わ、若様! お待ちくださいませ!」 革の大きな鞄を手にしたアーレが、慌てて馬車から飛び降り、門へと向かう私の後を追ってくる。
「ちょっと──」
ドサッ!
何かが地面にぶつかる鈍い音。私はその音に顔を向けた。
「ああ、アーレ…お前、どうしてそこまでドジなんだ」
音のした方を見れば、そこには転んだアーレの姿があった。服は泥と土で汚れている。
私は静かに彼に近づき、立ち上がるのを手助けしようと手を差し伸べた。
「えっ…! い、いえ! そんな、若様の手などお借りするなど、とんでもない不敬で…!」 彼は少し震えているようだった。
その言葉に構わず、私は彼の手を握り、立ち上がらせた。 「次は転ばないように気をつけろ」 そう言って、再び巨大な門の方へと顔を向ける。
ああ、この忌々しい転生…。この体は女王の五男として生まれたのだ。なぜ「女王の」か? それは、この世界では女性の方が力を持ち、次の統治者となる後継者は女性だからだ。…これは、一刻も早く元の世界に戻らなければならない、もう一つの理由だ。
そして、この世界をさらに嫌いにさせる、もう一つ神経にさわることもある。そう…どうやら私は、どうしようもない駄作小説のように、多くの者から嫌われている者の体に転生してしまったらしい。
女王の五男、十六歳。十三歳の時、公爵令嬢に手を出そうとしたとされ、そもそも女王の実の子ではありません。特定の魔法の適性を認められただけで、皇族として受け入れられた、いわば「出来合いの子」なのだ…
知れば知るほど、この体が嫌になる。元々のダミアンは、人々から嫌われるための理由を、もっとたくさん残していった。例えば、十四歳で使用人たちに性的な行為を強いたこと…。
自分に触れたという理由で、小作農や使用人を拷問したこと…。国の高官への侮辱、その他もろもろ…
とにかく、私は今、彼が行ったすべての行為の責任を負わなければならない。人々の憎悪と軽蔑の眼差しにはうんざりしているが、それでも、先代のダミアンが築いたこの悪い顔を壊すつもりはない。
結局のところ、それは私が自分の仕事に集中するための、より多くの自由な空間を与えてくれるのだから。
そして今…私はここにいる。
巨大な黒門を見上げる。
「ロナンス国際アカデミー」
私がこれからの六年間を過ごすことになる場所。数日前に十六歳の誕生日を迎え、慣習に従い、ここで学び、「ふさわしい人物」になる必要がある。
ここでは魔法も教えられる…剣技や霊気(オーラ)、戦略、家政学、その他多くのことも。そしてまた、ここでは誰もが将来の伴侶を見つけるという…
この目標を達成するための強力な仲間を見つけるのに、これ以上ない機会ではないか?
人類の土地のすべての国から学生が集い、他の地域の後継者たちさえも学ぶこの場所で。
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