廃館のドール ~2025年ハロウィン謎解き企画~

優夢

第一話 誘われた廃館

 その洋館は、人気のない土地に取り残されていた。

 かつては、高貴な家族が住んでいたという。



 厳しくも優しい父。聡明で穏やかな母。おとなしく礼儀正しい娘。

 幸せな家族は、ある秋の夜、突然の侵入者によって全員が命を奪われた。



 犯人が捕まり、死刑執行されてから、随分と長い年月が経った。

 今は誰も住んでいない。

 壁面の塗装は剥げ、色あせて苔むしている。

 まるで館の悲鳴を刻むように、雷鳴に似たひび割れがはっきりと目視できた。



 屋根は穴だらけで崩れていて、今にも何かが落下してきそうだ。

 割れたガラス窓の残りが、風でカタカタと鳴っている。



 雑草で覆われた庭に足を踏み入れる。不法侵入だということは理解していた。

 それでも、この館に近づかずにはいられなかった。



 いつからだろう。

 すすり泣くような悲しい声が、館の中から聞こえてくるのを知ったのは。

 恐怖より、惹きつけられるものを感じた。



 『 泣いているだれかを助けたい 』



 なぜそんな思考に行きついたか、自分でもわからない。

 不可思議な使命感と、好奇心と、衝動。

 引き返すことはいつでもできる。まだ、そう思っていた。



 夜風がしんと冷え、上着を羽織っても肌寒い10月の夜。

 頭上には、さんさんと輝く銀色の月。今月末はハロウィンだったと思い出す。



 月光に照らされた廃墟の洋館は、幻想的に美しかった。




※※※ 作者からのコメント ※※※


 主人公は、これを読んでいるあなた(あなたがイメージする主人公でもOK)です。

 

 2025年10月30日の23:59に、ストーリーの最後までたどり着けなければ。

 ハロウィンには、この物語はバッドエンドを迎えることでしょう。


 「あなた」はひとりであり、同時に、ここを読む人の数だけいます。

 コメント欄では、書き足しや、個別に謎のヒントを求めることができます。


 他者のコメント欄を読むことで、あなたは、「別のあなた」の視点を垣間見、解けない謎をかわりに解いてもらうことができるでしょう。



 ハロウィンの夜が訪れるまでに、どうか、


 『 彼女 』 を


 救ってあげてください。



 

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