第15話 コレクション

アジトから離れた倉庫の一角、薄暗い棚の上に並んだ小さなケース。

 中には、私が捕らえた勇者たち――生きたままではないが、まだ形をとどめる存在たち――が収まっている。


 手のひらサイズのケースを指でなぞりながら、私は静かに笑った。

 血と恐怖の匂いは消えないが、それもまた心地よい。

 ケースごとに、捕らえた順、戦いの痕跡、表情の違い――すべてが私の記録であり、宝物だ。


 「ふふ…今日は誰を飾ろうかしら」

 私はつぶやきながら、棚の前に座り込む。

 それぞれの勇者の視線を思い浮かべるだけで、心が躍る。


 ソエムがやってきて、私の背中を軽く叩いた。

「茉優、ずいぶんコレクションが増えたね」


 私は笑って頷く。

「ええ、これで私の楽しみも増えたわ」


 夜の倉庫に、静かな狂気が満ちていた。

 闇の中で私は完全に自由だ。誰も止められない。


 ――次は、来栖風梨。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る