第7話 情報収集

アジトの奥には、情報班の小部屋があった。

壁には無数のモニターが並び、街の様子や黒羽の動き、裏社会の噂が映し出されている。


 「さぁ、茉優。まずは簡単な仕事から。黒羽の情報整理を手伝ってくれる?」

ソエムが手渡してくれたのは、膨大な資料の束。


茉優は小さく頷き、席に着く。

手は少し震えるけれど、胸の奥は期待で熱くなる。

ここでの仕事一つ一つが、来栖風梨を間近で見るチャンスにつながる――。


資料をめくるたび、黒羽の構成員や過去の事件、金の流れ、潜入先の記録。

情報は複雑で危険だが、茉優は一つずつ整理し、赤ペンでチェックを入れていく。

手元のモニターでは、街の監視カメラ映像がリアルタイムで映っている。


 一日の作業が終わる頃、ソエムが声をかけた。

「茉優、今日の仕事はここまで。よくやったわね」


茉優は深く息をつき、肩の力を抜く。

でも、心の中はまだ緊張で張り詰めている。

このアジトの中で、いつ来栖風梨が現れるか分からない――その可能性が、胸の奥の高鳴りを止められない。


夜が深まるにつれ、茉優は思った。

――この場所で生き延びること、黒羽の一員として行動すること、それが私の目的。

そして、その先に、来栖風梨の勇姿を目に焼き付ける瞬間が待っている。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る