シャドウナイト‐地獄の道先案内人‐
尹・龍虎とスタジオライトニングブルー
第1話 序章 Vol.1
東の空が黒から紫に変わり。やがてそれが茜色に変わるころ。朝の静寂を破り、春先の身を切る様な、冷たい空気を切り裂いて。車の影さえ見えない高速道路を、一台のオートバイが、正気の沙汰とは思えない、凄まじい速度で現れた。
ただのバイクでは無い。日本のバイクを遥かに超える大きさ、腹に響く重低音のエキゾ-スト、大型のカウルとトランクは、アメリカの誇る大型バイク、ハーレーダビッドソンクラッツィク、おまけにサイドカー付きときている。とても日本の街に溶け込めそうに無いしろものであるが、不自然さが無いのは乗り手の体格とセンスのせいか。
乗り手の身長は百九十cmを超える長身で、ただ、背が高いだけでは無く、肩幅も広く、胸板も厚い。体全体が大きく、見事に鍛えられている。
その体を包むのは、白いアルマーニーのダブルのスーツ、シャツは青い開襟シャツに、赤いネクタイ、白いベストの胸ポケットには、赤いサテンのハンカチが入れられている。
しかし、身を飾る物は何も身に付けてはいない。ネクタイにピンもチェーンも付けていない。
成り金趣味では無い様だ。気に入った物を身に付けただけの様にしか見えない。それ程見事なセンスで着こなしている。
さらにその上には、ダークグレイのダンヒルのトレンチコートを着崩しており、足元はどこのブランドが、白とブラウンのツートンカラーのエナメルの革靴できめている。
頭には、シルバーのジェトタイプのヘルメットを被り、さらに、黒いレイバンのサングラスをかけている。
その顔立ちからして、年の頃は、二十一、二と言うところか。引き締まった端整な顔のハンサムだが、どうやら、日本人と、どこかのハ~フの様である。
彼の名前はクルード・ヤンガー・飯島。日本人の母と、アメリカ人の父を持つ。歳は二十一歳、ハワイ生まれのロス育ちで、日本には、十三歳の時に、両親と妹と共に移り住んだ。職業は私立探偵、しかし、今は天涯孤独の身である。
「まったく、こんな夜も明けぬ頃から呼び出しやがって。狸部長め、つまらない用事なら、張り倒してやる。」
どうやら、この口調からして、日本語は達者の様だ。しかし、言っている事は、物騒だし、だいたい部長とは誰のことか。
「まあ、お仕事しなきゃ、飯は食えない、がんばりますか。」
やがて、愚痴にも飽きたのか、クルードは、
さらに、スピードを上げて東京へと向かった。
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