幼馴染がずっとべったりしてくるんだが、これが普通の男女の仲なんだろうか?
わたぐも
第1章 気付かない好意
第1話 いつも通りの幼馴染み
俺は
高校に入学した俺は、一人暮らしを始めた。
今日から通うここはトキワ高校。新しい環境や新しく出会う人達、慣れない生活。全てが新鮮に感じる高校生活がスタートした。
しかし、朝の登校路、後ろから聞こえてくる幼馴染みの声は、もはや俺の日常の一部と化していた。
「おっはよー!そーすけっ!」
朝から明るく甲高い声とともに、右肩に少し重しがのった。
そしてふわっと香るフローラルな匂いが俺を包み込むと共に、いつも見ている顔が俺の視界に入り込む。
セミロングの髪はブロンズ色で、毛先にほんのり赤みを帯びている。ぱっちりした瞳に長いまつげ、口元にはいつも微笑みが浮かぶ。
彼女は、
小中高、ずっと一緒で、仲良くなってから何故か俺にベッタリとくっついている。
そんな彼女は太陽の次に明るい眩しい笑顔で、はにかんで挨拶をしてきた。
「おはよ。毎日朝から元気だな」
「うん!朝からスイッチ入れてかないとね〜」
たわいもない会話をしながら、校舎に着き、正門をくぐる。校舎へ続く道には、まだ散りきらない桜が舞っていた。
新しい通学路、新しい校舎、新しく出会う人。しかし俺の隣には、昔から変わらない顔ぶれがいた。
そして教室に到着した。歩実とは同じクラスで、席は俺の少し離れたところ。俺の席は窓際の後ろから二番目。
そして俺の後ろの席には、最近友達になった
「よっ今日も彼女と登校か?」
「そんなんじゃないって、幼馴染みだっての。」
無造作に跳ねた茶髪と、ブレザーの肩を少し抜き、シャツは第二ボタンまで緩く明けている。
ノリが良くて人懐っこい性格をしていて、こいつとは出会ってすぐに打ち解け合えた。
一方で歩実は、友達作りに苦戦しているようだ。
「宗助は良いな〜、もう友達できたんだ?」
歩実は当たり前のように俺の机の上に座り、相澤の方をチラッと見る。
相澤は「うっす」と軽く挨拶をする。
「相澤、こいつとも友達になってやってくれよ。」
「おう!いいぜ〜よろしくな高城!」
歩実は、少し微笑んで答える。
「うん、宗助が言うんだったら、友達になる〜」
俺が言わなかったら相澤とは仲良くする気無かったのかよ。
――朝のホームルームが終わり、眠い授業を終え、昼休み。
購買でパンを買って、三人で教室で食べる。
歩実は椅子を持ってきて、俺の机の上に弁当を広げる。占有面積は実に八割を占めている。
「あの、もう少しコンパクトにならないかな……?ピクニックじゃないんだから。」
「いやいや、この美味しそうなお弁当をおかずにパンを食べれば、一石二鳥でしょ!」
一石二鳥ではない。という呆れた目で歩実を見ていたら、自分の弁当に入っていたウインナーを俺の焼きそばパンの上に乗せてきた。
「何してんねん」
「まぁまぁ、これで許してよ〜」
焼きそばパンオン・ザ・ウインナーとかいう組み合わせの悪いものを勝手に作られ、また呆れた目で歩実を見ていると、
「何?アーンして欲しかった?」
ニヤニヤしながらこちらを見て、箸にはもう一つのウインナーが挟まれていた。
「お前ら夫婦かよ!」
その様子を見ていた相澤がツッコミを入れた。
歩実は肯定したが、俺は否定した。
「そうだ宗助!明日から宗助の分もお弁当作ってきてあげるよ!私毎朝自分の作ってるから、ついでに!」
「え、そんな、別にいいって。時間も手間もかけちゃうだろ」
「毎日パンだと栄養足りないよ〜?」
「べ、別にいいって……」
「それに、一人暮らしだし自炊してないんでしょ?普通に体調面心配なんだけど?」
いつものおちゃらけた感じではなく、ちょっと真面目な顔も混ざってグイグイと攻めてくる歩実。
結局押しに負けた俺は、毎日弁当を作ってもらうことになった。
実際昼を買う手間が省けるので食費が浮いたが、その分高城家の負担になっていることを考えたら、少し申し訳なかった。
「あの、俺の分も作ってくれないかな……?なんつって」
「なんであんたの分を作らないといけないの??し〇ば?」
「高城……流石に酷くなぁい?」
真顔で玄樹を軽蔑する歩実。俺に接する時との温度差がまるで、サウナを出たあとに入る水風呂のような緩急だ。サウナ入ったことないけど。
ある日の下校時刻。ホームルームが終わり、歩実がこっちにやって来た。
「帰ろっ!」
「うん、ちょっと待ってて」
荷物をカバンにまとめ、歩実と一緒に帰路に着く。
「今日のお弁当、どうだった?」
「さっき美味いって言ったろ?何回言わせるんだ。今日は話題それしかないのか?」
「へへ、だって美味しいって言われる度、嬉しいんだもん」
「じゃあ、美味しい美味しい美味しい」
「もう!そんなのは違う!ちゃんと気持ちを込めて言ってよ!」
こんな調子で一日中、歩実に振り回されている。高校に入学しても案の定変わることはなく、むしろエスカレートしていってる気がする。
こいつが俺にベッタリするようになったのは、小学五年生の頃からだ。
当時、保健委員だった俺は、体育の授業で怪我をした歩実を保健室まで連れて行ったことがある。泣きわめく姿に同情して、ずっとそばにいてやった事を覚えてる。
それから、何かと俺に対してベッタリするようになり、そのせいで俺は男の友達を何人か失った。
で、今に至る。
当時は、ただの仲の良い女友達という認識だった。しかし最近はどうも距離感がおかしい。
ランドセルを背負って俺にまとわりついていたあの頃の小学生の姿が、今では腕を組んだり体を寄せたりしてくる。
俺のパーソナルスペース、もはや絶滅の危機。
「あのな、流石にこのくっつき方は周りから誤解を産むからやめろ」
「え〜、私は別にいいけど?だからやめない」
俺が良くないんですが。
振り返った瞬間、 歩実は笑いながら飛び乗るように俺に抱きついてきた。
いい匂いふわっと包まれると共に、俺はバランスを崩した。そして胴体がグラッと後ろにつんのめった。
――その時、
「わっ!?」
耳元で短い叫びが聞こえた。俺がバランスを崩ししたことによって、歩実の全体重が俺にのしかかる形で地面に倒れ込んだ。
――ドサッ!!
硬いアスファルトの上、俺は仰向けで横たわっていた。頭は打たなかったが、多分腰をやった。
そして俺の上に、歩実が跨るように乗っていた。
スカートが程よくめくれ、健康的な太ももがあらわになっていた。よく見ると、ちょっとエロかった。
「おい、外であんまりそんな格好するなよ。あと重いから降りてくれ」
「宗助、なんかこれ興奮する」
勝手に外で発情しないで欲しいな。あと早く降りてくれ、人が来たら誤解される体勢だからこれ。
「え……な、何してるんですか……!?」
まずい、トキワ高の制服を着た女子生徒に見られた。
「ほら立って、宗助、続きは家でするよ〜♡」
歩実が立ち上がり、俺の手を引く。なんか含みのあること言ってたけど、そういうのに興味持ち始める年頃なのかな。
「あ……え、あ、あの……私、何も見てませーーん!!」
女子生徒は顔を赤くして走って去っていった。盛大な誤解をさせてしまった。いや、俺はなにも悪くないよな。
入学早々、幼馴染みに振り回される日々が続いた。内心ちょっと迷惑なところもあるが、なんだかんだ賑やかで楽しいので目を瞑ってやってる。
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