ジュエルアイ&光と闇の白の三日月《ヴァイスムーン》

さくら猫

序章 始まり歌

プロローグ

「■■、なんでだよ」

 後悔しているような声がした。

 顔から血を流し、その姿が朧気おぼろげ

 少年は、全身がひどく損傷していた。生きているのが、不思議なぐらいだ。

 この人を助けたくて、足掻いた。

 仲間を集めて、この願いを果たそうとした。

しかし、仲間は犯した罪によって、死んでいった。

 少年も約束を果たせず、命を終えようしている。

 

『--どんな君だって、満月になれる♪』

『願いは--♪』

『……■■。■■のことが……』

『……わりぃ。今日、用事があったんだ。■■じゃあな』

『……うん。明日、待っているから。■■に言いたいことがあるから来てよ』

『ああ、任せておけ』

 鈴を転がすような歌声が、好きだった。心を寄せた人に、ちゃんと聞いてやれば……。心を寄せた人に、この想いを伝えらればよかったな。

(俺って……本当に……ばかだよな)

 命を失い始めて、心を寄せた人が儚く笑う理由。助けたい人が、どうでもいいと言ったのがわかった。

 

「ーー ひとり…………で……」

 耳が、意識が、遠くなる。

 やがて、生命いのちが尽きた。

 永遠の眠りつく。

 

 

『このまま終了するのか』

 誰かが問いかけてくる。

 考えるまでもなく、答えが決まっていた。

 

 そんなの許されない。断固として、拒否してやる。

 犯した罪によって死んだ、仲間を助けるんだ。

 

『俺がお前を助けてやる。だから、どうでもいいなんて、二度と言うな!』

 

あの約束を果たせずに ーー

 

 ーー 死んでたまるか!!

 

 生命いのちはなくなろうとも、魂が叫んでいた。

 祈りに変わり、光の粒子りゅうしが天に登っていく。

 

-- 約束を果たすために、仲間を助けるために。あいつに言いたいことがあるんだ。もう一度、この祈りを受け取ってくれ!!

 

 光の粒子が、紅蓮のような長い髪の少年を包んだ。

 

『--♪ どんな君だって、満月になれる。願いは、想いは、奇跡に変わる--♪』

 

 鈴を転がすような歌声とともに、紅蓮のような長い髪の少年が目を覚ます。

 祈りを果たすために、物語が動き出す。

 

 そして、目を覚ます時、新たな『ヴァイスムーン』が誕生する。

 これは、その前の物語である。

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