閑話・ダンジョンコア発生の余波と最寄りの町の大騒ぎ

「近場でダンジョンコアが発生したって本当か?」


「ああ、なんでも、かなり強力な余波が来てたらしいからな……。ダンジョンの規模次第じゃマズイことになるかもしれん。」


ここは、ラドネル国の辺境にある街エリジウム。

数日前に、近隣よりダンジョンコア発生時の魔力余波が検出され騒ぎとなっている。


【冒険者ギルド・辺境支部】にて、緊急クエストとして発令されたダンジョン捜索と調査依頼。

それにより、にわかに活気づいたこの町は、元来病気療養や最期の一時を過ごす地として、平和な時間が流れていた。

一応、サナトリウムやホスピスの町となった理由が理由な為、監視のために冒険者ギルドの支店は置かれていたが、基本的にクエストも町でのちょっとした手伝いや、町の外に現れた野良魔物の討伐だったり薬草採取、近隣の町への買い出しに伴う護衛依頼など、低~中ランク程の物がほとんど。


今回放出された余波から推測されるダンジョンのレベルだと、うかつにダンジョン探索依頼をかけても、下手したらダンジョンに食われて終わりかねないのだ。


ちなみに、何故エリジウムが終末医療の町になったかと言うと、【ダンジョン葬】という風習の為である。

エリジウム近辺には【姥捨ての洞穴】と呼ばれる不思議な洞窟があり、そこに遺体を遺棄する事で通常より早く風化する事から、流行病の遺体でも手早く処分出来ることもあり、この風習は廃れないどころか有効活用されているのである。

ただし、こういった性質の洞窟は程度やそうなるまでの期間の差はあれど実際に魔物と宝を産み出すダンジョンに成長しやすい為、監視が置かれていたという訳だ。


「ところで、今回の余波って相当強かったって言うけど本当か?

俺はさっぱり分からなかったが……。」


「そりゃお前が魔力感知出来るほど扱いに長けてないからだろ。

お前アレじゃないか、前衛脳筋物理アタッカー。」


「はぁ!?人を突進するしか脳の無い魔猪マッド・ボア扱いすんなよ!?

それを言ったらお前だって立ち位置は似た様なもんだろうが!」


「ざーんねん。俺は身体強化も活用する頭脳派前衛なんでな!

少なくともお前よりは魔力の扱いに慣れてます〜!

……まあ、俺程度でも一瞬悪寒がするくらいの魔力余波だったからな。

本職からしたらかなりヤバかったんじゃないか?」


「マジかよ……。」


エリジウムを拠点とする冒険者たちのそんなやり取りを露知らず。

件のダンジョンは着々と《産まれたてほやほやのアンデッドダンジョン》の偽装工作に邁進しているのだった……。


ーーーーーー

あとがき

ダンジョン最寄りの町と、ダンジョン葬の風習についてのお話でした。


町の名前であるエリジウムは、ギリシャ神話の英雄達が死後向かうとされる楽園の名であるエリュシオンの別名から。

近くに擬似集団墓地がある為に、サナトリウム(重病、治癒困難な感染症などの医療隔離施設)やホスピス(末期癌などの苦痛緩和を目的とした終末医療施設)の町として作られた場所に理想郷の名前を付ける皮肉……。


調べてる時に出てきたのですが同名のSF映画もあるそうで、そちらは理想郷の意味でエリジウムの名を使ったスペースコロニーを舞台としたお話なんだとか。


いよいよ、次からダンジョンのビフォーアフターお披露目と、隔離された心臓部で行われる守護者創造(という名のメンタルケア要員追加)の予定です。

当初のプロットには無いメンバーがぽこぽこ生えていますが、これもライブ感の賜物ですね!(計画性がないとも言う)


ちらほらフォロー頂いていたり、ランキング通知がじわじわ来ていたりなど見て頂けている方には感謝しかありません。

不定期更新とはなりますが、今後とも楽しんで頂けたら幸いです。

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