第3話 「ラスト・シンデレラ・リベンジ」④新しい恋人登場


翔太との縁を切り捨て、美咲の心は奇妙な解放感に包まれていた。

もう「誰かの妻」として生きる必要はない。泣き寝入りする自分も、蔑まれる自分も、どこにもいない。


そんなある日、美咲のSNSにひとつのDMが届いた。

――「あなたの勇気に救われました。いつか直接お礼がしたいです」


送り主は、広告代理店に勤める年下の男性・蓮。炎上の渦中で美咲の投稿を見て、理不尽に声を上げる勇気に惹かれたのだという。


最初は軽く流そうと思った。だが、やり取りを重ねるうちに、美咲は気づく。

「私の話を、真剣に聞いてくれる人がいる」

久しく忘れていた温もりに、心が揺れた。


数週間後、二人はカフェで初めて会った。

白いシャツにジャケット姿の蓮は、爽やかな笑顔を浮かべて言った。

「写真で見るよりも、ずっと綺麗ですね」


美咲は思わず笑った。褒め言葉を真正面から受け止めたのは、いつぶりだろう。


翔太の姿とは正反対の、誠実で、優しく、まっすぐな眼差し。

彼と並んで座る自分を、誰かがスマホで撮影していた。翌日には「シンデレラに新しい王子様?」とネットニュースになり、美咲の名前は再びトレンド入りする。


かつての「被害者の妻」は、今や「恋するヒロイン」。

世間の目は冷ややかな同情から、憧れと羨望へと変わっていった。


美咲の心に芽生えた小さなときめきは、確かな未来の予感へと膨らんでいく――。



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