第1話 『妻の秘密は年収3億』 ⑤女王の誕生


リベンジ・キャピタル設立から1年。

私は今、ニューヨーク証券取引所のバルコニーに立っていた。


「本日、我が社は上場を果たしました。時価総額、5000億円」


鐘を鳴らす瞬間、世界中から祝福のメッセージが届く。

隣には藤原。左手の薬指には、1ヶ月前に彼からもらったダイヤの指輪が輝いていた。


「結衣、おめでとう」

「祐一もね。私たち、やり遂げたわ」


1年で私の人生は劇的に変わった。

YouTubeチャンネルは登録者1000万人。

著書『専業主婦から資産100億へ』は世界的ベストセラー。

そして何より、心から愛し合えるパートナーを得た。


「次は東京で記者会見だね」

藤原が優しく微笑む。


東京への機内、私はふと過去を振り返った。

健司に見下され、家政婦扱いされていた日々。

あの屈辱が、私を変えた。


記者会見場は超満員。

「山田さん、成功の秘訣は?」


「裏切りを、エネルギーに変えることです。恨みに囚われるのではなく、それを超える成功を掴む。これが最高の復讐です」


「元旦那さんについてはどう思われますか?」


私は微笑んだ。

「感謝しています。彼が私を裏切ってくれなければ、今の私はいなかった」


会見後、スタッフが耳打ちする。

「実は、会場の外に元旦那さんが…」


モニターを見ると、みすぼらしい姿の健司が映っていた。

「結衣に会わせてくれ!謝りたいんだ!」


警備員に止められながら叫ぶ姿。哀れだった。


「どうしますか?」スタッフが尋ねる。


「放っておいて。彼は私の人生に、もう関係ない人だから」


その時、藤原が提案した。

「でも、一度だけ会ってみたら?けじめをつける意味で」


私は少し考えて、頷いた。


控え室に通された健司。

やつれ果て、一年前の面影はない。


「結衣…いや、山田さん…」

「何か用?」


健司は土下座した。

「謝りたかった。俺が馬鹿だった。お前の…あなたの価値を理解できなかった」


「今更?」


「頼む!もう一度チャンスをくれ!今度こそ、ちゃんと…」


私は失笑した。

「チャンス?あなた、まだ分かってないのね」


立ち上がり、窓の外を見る。

東京の街並みが一望できる。


「私はもう、山田結衣じゃない。藤原結衣になるの。来月、結婚式よ」


健司の顔が歪む。


「それに、あなたに投資する価値はない。投資の基本は、『二度と同じ失敗をしない』こと」


藤原が部屋に入ってきた。

「結衣、次の予定が」


「ええ、今行くわ」


健司の前を通り過ぎる時、最後に一言。


「さようなら。あなたのおかげで、私は女王になれた」


健司は泣き崩れた。

でも、もう振り返らない。


会見場を出ると、美咲の姿があった。

「山田さん!」


「あら、美咲さん」


「私…謝りたくて…あの時は…」


「いいのよ。あなたも被害者だったんでしょう?」


美咲は涙を流した。

「ううん、違う。私も悪かった。でも、あなたを見て気づいた。女は、誰かに依存しちゃダメだって」


「頑張って。あなたにも、やり直すチャンスはあるわ」


私たちは高級車に乗り込んだ。

運転手が告げる。

「空港までは30分です。プライベートジェットの準備は整っております」


「ハネムーンは南仏だったね」藤原が手を握る。


「ええ。でもその前に、リベンジ・キャピタル第2号ファンドの契約が」


「仕事熱心だね」

「当然よ。目標は資産1000億。まだ通過点」


車窓から見える東京タワー。

かつて、健司と見た景色。

でも今は、全く違う輝きを放っている。


『専業主婦から、投資の女王へ』


メディアは私をそう呼ぶ。

でも、これはまだ始まりに過ぎない。


「結衣」

「なあに?」

「愛してる」

「私もよ、祐一」


夕日が、私たちの未来を黄金色に染めていた。

復讐は完了した。

そして、新しい帝国が今、始まる。


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