第10話 赤い手紙
ベルモントのレイク・ストリートは、緩やかな坂道の多い住宅街だ。十二月に入ると家々のポストはクリスマスカードで溢れ、サンタや雪だるまの絵柄が並ぶ。だが十二月十日、住民たちの間で不可解な噂が広がった。
朝、複数の家庭に同じような封筒が届いていたのだ。切手も消印もなく、手書きの宛名は赤いインクで書かれていた。中には短いメッセージカードが一枚だけ入っていた。
最初の文面は、どれも他愛のない挨拶だった。「メリークリスマス」「よい休日を」など。
だが最後の一文だけは、すべて同じだった。
“On the 25th, I will return.”(二十五日、帰る)
受け取った一家の母親は悪質な冗談だと笑い飛ばした。しかし翌日、再び同じ封筒が届いた。今度は「名前」が追記されていた。赤インクで書かれていたのは、その家の長女の名前だった。
三日目には、さらに不気味な変化があった。カードの隅に小さなシミのようなものが広がり、指で触れると乾いた血のように崩れ落ちたのだ。
不安に駆られた住民たちは警察に相談した。だが配達の記録はなく、ポストに投函する人影も目撃されていなかった。プレザント・ストリートの交番の警官も「イタズラだろう」と首をかしげるばかりだった。
その夜、ひとりの少年が窓の外に影を見た。雪の降りしきるレイク・ストリートを、赤い服を着た大男がゆっくりと歩いていた。
翌朝、彼の家のポストには新しい封筒が届いていた。カードの最後には、やはり赤いインクで同じ言葉が記されていた。
“On the 25th, I will return.”(二十五日、帰る)
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