薬草魔改造おじさん 〜薬草をエリクサーで育ててたら、なぜか世界樹の新芽が生えたんだが〜

草和す~つ

001 お粥で育てた薬草は消化が良すぎてもはやポーション。

 ホームセンターで買った薬草の種を育て続け、はや一年。

 高校生になった途端、姪の棘姫いばらきレモンちゃんが「アタシ、ダンジョンアタッカーになる!」とか言ってダンジョンに潜り出してはや一年でもある。

 レモンちゃんは近年稀にも見ないんじゃね?レベルの良い子で、叔父の俺とも楽しそうにお喋りしてくれる。

 彼女が赤ん坊の頃からお世話をさせてもらってて、その延長で今までずっと、こんな冴えないおじさんと仲良くしてくれている。

 さーすがに小学校にあがったら、いや最大でも小学生高学年になったはレモンちゃんと疎遠になるんだろーなーとか思ってたんだけど、高校二年になった今もまだ仲良くしてくれている。

 圧倒的に良い子、とゆーかアルティメット良い子な姪がダンジョンに潜ると聞いた去年の俺は、老化した頭で考えた。必死で考えた。なんとかレモンちゃんのお手伝いできないかと。

 結果――薬草を栽培する事にした。

 市販の薬草は安くて一枚一万円とかするからね。出来る限り、是が非でも援助させて頂きたい。だってレモンちゃんてば銀河イチ良い子なんだもの。


「今回のおじさんの薬草、めっちゃすごかったんだけど!? 薬草のクセして、食べた瞬間に傷が治ったよ!? ポーションじゃないのにさあ!? 流石におかしくない!?」


 現在時刻は、午後九時。

 ダンジョンアタック帰りのレモンちゃんは、俺の住むマンションにやってくるなり、栽培した薬草を褒めてくれた。

 薬草は、食べるとじわじわ時間をかけて回復するけど、ポーションは飲んだらすぐ回復する。

 その性能差、なんとかならんのか! 可愛い可愛いレモンちゃんの身体に傷でも残ったらどうする!? という気持ちで、薬草の栽培方法を工夫してみたら、結構なんとかなってしまった。


「ああ、消化に良い薬草を目指して栽培したからねえ。凄かったなら、よかったよかった」


 俺が所有しているゴミに等しきスキル、育児スキル【まんま】で、年下の生き物にならどんな食事でも与えられる。

 そのスキルで薬草にお粥を食べさせてみたら、消化に良い薬草が出来てやんの。

 消化に良いからこそ、薬草の効能がすぐに出たんだろう。


「で、今回渡す薬草は、六枚で二千五百円のA5牛薄切り肩ロースで育ててみた子なんだけど、どうだろ?」

「また頭おかしい薬草の育て方してるう……」


 いやだって、普通に育てるのも悪くないけど、せっかく自前の育児スキルが活用できるんだから、やってみたくなるじゃん? 魔改造? 的なヤツ?


「ところで、おじさん。そろそろポーション作ってみない?」

「えー、でも、お金がなあ……」


 薬草の種は一粒百万円で済んだし、育てるにも普通のプランターで十分だった。

 でも、ポーション作りとなるとそうはいかない。

 灼熱の魔法陣刺繍カーペットに、魔法の窯に、混沌の混ぜ棒に、エトセトラエトセトラ。

 道具を揃えるだけで、軽く一千万は吹っ飛ぶ。

 そこに、大量の材料費もかかってくる。

 錬金術なんかに手を出したら、お金なんていくらあっても足りないくらいだ。という感じの事が、確かなんかの本に書いてあった。


「お金ならアタシが出すから!」


 胡座をかいてる俺の前で、堂々とした仁王立ちでそう言うレモンちゃん仰け反り過ぎー。おパンツ見えてるー。

 指摘したらセクハラになりそーだから言わないけどー。


「え、いやさすがにレモンちゃんからお金は受け取れないよ?」


 勿論、薬草代だって受け取っちゃいない。

 だって可愛いレモンちゃんの為だけに作ったんだもの。

 薬草を栽培した利益? 対価? 報酬?

 そりゃあ、レモンちゃんのダンジョンからの生還でしょうよ。他に何があるってのよ。

 ただでさえ彼女、ダンジョンアタックは三日おきという鉄則を破って、毎日ダンジョンに潜ってるんだから。

 まあ、行方不明のお母さんを探すって大きな目的があるから、少しの無茶はしょうがないけど、……おじさん、ほんとレモンちゃんの事心配だよ。


「……アタシ、おじさんのポーション、欲しいな?」


 きゃるん。

 そんな可愛らしい擬音が聞こえてきそうなくらい、スーパードゥーパーハッチャメッチャプリティーボイスでおねだりされたらね、もうね……。


「買うわ! 明日、いや今すぐ道具買ってくる!」


 作らない?とかじゃなくて、作って?的な感じで普通にお願いされるとね! おじさん駄目なんだよね! すぐに作ってあげたくなっちゃうんだよね! 仕方ないね! レモンちゃん可愛いから仕方ないね! うん!


「え!? いや錬金道具ならアタシが買ったげるから!」

「いらないよ! そのお金は自分の装備に使いなさい! じゃ、さくっと買ってくるから! なるはやで作るから待っててね! ごめんね!」


 近場のホームセンターは十時閉店! すぐに行けばなんとか間に合う筈! うおおおおおおおお! ハイパー素早いお着替えええええええええ!


「……おじさん、アタシのこと好き過ぎない?」


 俺こと姪っ子だいすき♡おじさん、命ヶ為めがためタクミ(40)よ!

 足腰の負担なんて考えるな!

 明日の身体の心配なんてするな!

 お前は可愛い可愛い姪っ子の事だけを想って動けばいいんだ!

 そらそらそらそら! 店に向かって全力ダッシュだおんどりゃあああああああああああああ!

 レモンちゃんの為ならえんやこらあああああああああああああ!

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