いつかの

わたぺじあ

ひとぼせきめ ひとのかたちにもどして

あなたへ


 ひとのかたちにもどしてください。

 どうかどうか、おねがいします。

 ぼくにはとうに無いはずのうでが、いたみます。

 肩から下の陶器でできた部分さえ、いまだに熱を帯びてもえています。いたいです。


 ひとのかたちにもどしてください。

 おねがいします、どうかどうか。

 人形の足をつながれた関節部が、ひどくいたむので。

 一関節に四本も足をつなぐなんてどうかしている、ぼくは今とても蜘蛛の気分です。



 ひとのかたちになおしてください。

 どうか、おねがいします、どうか。

 あなたにくり出された瞳は、今どこにありますか。

 視神経のちぎれるぷつぷつ言う音と、気の触れそうなくらい足元にたまっていた血と、その日からまっくらな右側と。


 ひとのかたちになおしてください。

 おねがいします、どうか、おねがいします。

 いまや胴体と頭と内臓だけがひとのかたちをしているなんてうそだ。ねえ、うそですよね。

 あの子はいいました、助けて、蜘蛛の化け物がいるよって。だれですか、いつの間にぼくのせなかに、もう一対うでをくっつけたのは。


 こんなことになるなら、まだ道ばたでごみを食べて生きてるほうがましでした。

 汗だく吐くだく、しにかけながら生きてるほうがましでした。

 あのときはぼんやり生きていた、今はただはっきりとしんでいる。


 さい近、上手に歩けません。ペンをうまく持てません。ソフトビニールでできた指はうごかない。三十種類ある手のかたちの中から、ひとつを選んで、ペンにぎらせて、手回して、外して、付けかえて。大変です、あなたのせいだ。


 さい近、笑いかたがヘンだっていわれました。だってきれいに笑ってたらおかしいでしょう。こんなからだになってまで、笑いたくないよ。

 あなたはいいですね、きっとどこかで笑っている。しんでしまえばいいのに。


 ひとのかたちにもどして。ひとのかたちになおして。ゆりかごから墓場までなんて、うそだったじゃないですか。

 うす暗い部屋の中に閉じこめて、化け物みたいなからだして、化け物みたいなこころして、ぼく、あなたもろとも自分をころしてしまいたい。


 ひとのかたちにもどして、ひとのかたちになおして。今日も下手に笑いつづけて、外れた球体関節を眺めながら、ぼんやりすごしています。右眼からも左眼からも、水分はもうでてきてくれません。


 返事をください。もろとも、しにましょう。返事をください。はやくしてください。

 ひとのかたちにもどして。

 ひとのかたちにもどして。

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