第二十六景 魔法少女再び


「ナムーン☆オカルトパワー・メイクアーップ!!」

「ここで合掌のポーズを入れてはどうですかな?」

「良いわね、それ採用!」


 今日は午後からおばあちゃんとレンゲさんが出掛けたので、

 魔法少女の振り付けを見直していますぞ。


「この後、二礼二拍手一礼を入れるのもいいわね」

「神仏習合ですな」


 ワタクシがポーズをとる必要はないのですが、

 確認のために一緒になってやっておりますぞ。


 ————


「なかなか仕上がってきたわね。ここで一度、通しでやるわよ」


「「草葉の陰から導かれ、アタシは新たな力に目覚めた!

 呪いの力を宿した相棒を手に、正義のために戦う!

 ナムーン☆オカルトパワー・メイクアーップ!!(アップですぞ!)」」


『♪キラ~ン♪』


「えっ、今キラ~ンって鳴った?」

「鳴りましたな」


 ————


「……えっ? えええぇぇぇぇっっっ?!」

「ど! どうしましたかな!?」


「パンダちゃんあなた……!」

「ワタクシがどうかしましたかな?」


 と、鏡を見てみますぞ。


 ————


「何じゃこりゃゃゃゃぁぁぁっっ!」


 レイちゃんが!

 もう一人のレイちゃんが現れましたぞ。


 ————


「パンダちゃん、あなた私に変化しているわよ」

「確かにレイちゃんの様ですが……何かこう……“じゃない感”が……」


「確かにちょこちょこ違うわね。髪型はパンダ耳みたいなお団子があるし、

 私こんな垂れ目じゃないわ」

「背格好も一回り小さい上に、よく見るとワンピースがパンダ柄ですな」

「それに私こんな締まりのない顔じゃないし、猫背でもないわ」

(何故かディスられてる気がしますぞ)


 ————


「でも面白いわね。ウルトラの人にも偽ウルトラがいたし、

 なんだか地球の危機を救えそうな気がしてきたわ!」


「ねぇ、他にも何か変化できないの?」


 ————


「う~ん……。

 ナムーン☆オカルトパワー・メイクアーップ(ですぞ!!)」

『♪キラ~ン♪』


「えっ? こんどは何? 猫の様なパンダ色の生き物?」

「レンゲさんですぞ」

「確かによく見るとレンゲなんだけど、毛色はアンタの白黒ね」

「パンダ兎ならぬ、パンダ猫ですな」


 ————


「では次。

 ナムーン☆オカルトパワー・メイクアーップ(ですぞ!!)」

『♪キラ~ン♪』


「お菊さん?」


「……のつもりなのですが、いかがですかな?」

「四つん這いでシャケ咥えてるわよ」

「お菊さんの木彫りですな」


 ————


 この後も色々試して分かった事がありましたぞ。

 何度か練習すれば本物らしく見える事や、

 見たことのない人には変化できないようですな。


 ————


「じゃあさ、最後にこれはって自信作に変化してよ」

「う~ん……自信作……思い浮かぶ……のは。

 ナムーン☆オカルトパワー・メイクアーップ(らすと!!)」

『♪キラ~ン♪』


『ゴトン!』


 ————


「えっ! これが自信作?」

「なんか頭に浮かんだのがコレだったもんで」


 現れたのは——お地蔵さまだった。


 ————


「お地蔵? ん? あっ? あっ、あっ、アアアアァァァァァァァッッッッッ!」

「急に大声出してどうしたのよ!」


「…………」


「ねぇ、ちょっと、パンダちゃん! ねぇってば!!」


 ————


(……思い出しましたぞ……そう。

 あの世での出来事。

 阿弥陀さまとの約束。

 魂の導き手。

 何もかも……)


 ————


「ねぇ、大丈夫?」

「へっ? あ……あ、大丈夫……大丈夫ですぞ。

 連続して変化し過ぎたせいで、変な声が出てしまったのですぞ」


「びっくりしたわよ、もう。ところでなんで、お地蔵さまだったの?」

「……え~と……あれ、あれですな……。

 ……そう、レンゲさんに保護された公園でお地蔵さまを見かけたせいですな……」


「あら、あんたって結構信心深いのね」

「う……『うらめし屋』のメンバーですからな」


 ————


「ほんと? 大丈夫なの? 今日の特訓はこれで終わりにしましょ。

 明日は軽~く、ド突きの練習ね」


「何でやねん!」




 *――*――*――*――*――*――*



 更新予定は火曜日と金曜日の21時です。

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