娘は何とかごまかしたガール

 土曜日の午後、リビングに差し込む穏やかな光。僕はソファーに深く沈み込み、スマホを手にニュースを眺めている。娘は学習用タブレットを操り、何やら熱心に取り組んでいる様子。静かな時間。いや、そう思っていたのは僕だけだった。


 ​「お父さん、写っちゃった!」


 ​弾んだ声が飛んできた。娘が持つタブレットの画面には、真剣な顔でスマホを覗き込む僕の姿が捉えられている。僕は「撮り直せばいいんじゃないか?」と応える。撮り直しなんて、簡単なことだ。しかし、娘の反応は予想外だった。


 ​「大丈夫!スタンプで隠すから!」


 ​その言葉に、僕はなんとも言えない気持ちになった。僕という存在は、娘にとって「スタンプで隠すもの」なのか。


 そうか、と僕は再びスマホに視線を落とす。僕がニュース記事を読み進めていると、スマホが軽快な音を立てる。娘からのチャットだ。開いてみると、そこには先ほどの写真が送られてきていた。僕は思わず吹き出しそうになる。


 娘よ、その大きさのスタンプではお父さんの顔は隠れないよ。


 スタンプは、僕の顔の半分を覆うのがやっとで、むしろ隠そうとしている事実を強調しているようだった。


 娘は僕を隠そうとしたが、隠しきれなかった。いや、隠すことを諦めたのかもしれない。その不完全な隠蔽は、娘なりの愛情表現だったのかもしれない。

 僕ならどうする。

 娘と同じことをしていたかもしれない。


 不器用で、一生懸命で、どこかズレている。僕に似た娘。いつかお前も、僕のように顔が大きくなるかもしれない。


 ​でも、それでいい。そのままのお前で、強く生きるんだ。


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