第40話 ごめんなさい
「ぐふっ……」
クリフは袈裟の方向に綺麗に斬られていた。
クリフの口から血が漏れる。
「また邪魔か。思ったより、戦える者がこの村には多いな。けど、戦場に出るには歳を取りすぎたね」
「ソフィア……逃げえ!」
クリフはソフィアが今まで聞いたことがないほどの大声で叫ぶ。
「でも……!」
「早く! 無駄死にさせるでない!」
びくりと体を震わせたソフィアは、クリフの覚悟を感じ、歯を食いしばって逃げる。
「あらら」
スマイルは笑いながら、それを見送る。
「お前はまだ逃がさん」
体から大きく血を流しながらも、クリフはそう言った。
「逃げるもなにも、もう死ぬよね? 遊んであげるよ」
「若造……年寄りを舐めるな!」
スマイルは少しの間、クリフと打ち合い、そして突きを放った。
その突きはクリフの腹部を見事に貫いた。
「ぐっ……!」
クリフはもう立ち上がれない。
「お爺さん、もう終わりだよ。僕の部下達も来た。部下が来るまでに、全員殺したかったんだけど、失敗しちゃったよ」
スマイルの背後から大量の騎馬隊が現れた。
領主の兵士達が遂に、村に到着したのである。
「隊長、お疲れ様です」
「お疲れ様。思ったより戦える者が居て、時間取られてしまったよ。じゃあ、予定通り皆殺そうか。お爺さん、僕を恨んでもいいよ。さよなら」
スマイルは新たな獲物を探して、クリフの下を去る。
(ここまでか……やはり領主軍には勝てんか。どうか……ソフィアとレイルだけでも逃がしてあげればよかったのう。儂の我が儘で……すまぬ)
冷たくなる体温。
死を覚悟したクリフの体はどんどん冷たくなり、目も見えなくなっていく。
そんな中、クリフの右手だけ、温かい何かに包まれる。
「……レイルか?」
「……ごめん、なさい、クリフさん。俺は……」
レイルは泣きそうな声でそう言った。
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