【三章完結】賢者のカルマ〜百合好き元賢者の究極百合理論〜

ミズヤ

第一章『刺激を求める旅人』

1-0『失われた最強』

 カルマ・エルドライトという少年を一言で表すとしたら『鬼才』、これに尽きる。


 普通の両親の一般家庭に生を受け、特筆することもなく、本来ならば普通の人生を送るはずだった。

 魔法というものが存在する。これは体の中に宿っている魔力という力を魔力の通り道である魔力回路を駆使して発動する一種の超常現象的な力。

 その力を扱う才能は基本的に遺伝する。そのため、両親に才能が有れば才能がある子が生まれ、才能がなければ才能が無い子が生まれる。それがこの世の常識だった。


 しかし、カルマはこの世のバグのような存在だった。

 その突然変異とも言えるほどの才能は生後すぐに頭角を現し始めた。


 生後半年で誰に教えられたというわけでもなく魔力をその小さな身に纏い、一年経てば自由に身体強化を行い、大人と同じような動きが出来るほどまでになっていた。

 三歳でカルマは自分の十倍はある大きさの巨大な岩をたった一撃のパンチで粉々に砕いた。

 五歳になる頃には森の動物を不当に狩る密猟者を撃退、七歳になるころには大抵の大人には負けないくらいの実力を身に着けていた。

 十歳になると王都の五年制の冒険者学園へと通い始めた。

 入試は筆記、実技共に満点を叩き出し、当たり前のように主席で合格。そしてわずか一年程度で飛び級に飛び級を重ね、卒業を果たした。


 さすがにこれには不正を疑う者も多く、多くの卒業生はどこかのギルドに所属し、そこから仕事を斡旋して貰うのだが、信用がゼロのカルマはどこにも所属することが出来なかった。


 そこでカルマは十二歳という若さで自分でギルドを立ち上げ、所属しているのはカルマたった一人だけだというのに、わずか二年でトップクラスのギルドと呼ばれるくらいにまで成長させて見せた。

 その功績が認められ、十三歳にして六人しか居ない国内最強の称号である七人目の賢者に任命された。


 激動の十三年間だったが、彼にとってはほんのお遊び程度、暇つぶし程度の感覚でしか無かったのだ。

 そして、そこまで上り詰めた感想は――


「つまらない」


 その一言だった。

 カルマは殆どのことが当たり前のように出来てしまう。賢者程の激務でさえ、カルマにとっては軽い暇つぶし程度にしかならないのだ。


 実の所、カルマがここまでの地位に上り詰めたのは彼がもっと上に行けばもっと刺激的なことがあるのではと考えたためなのだが、刺激的なことは何も無く退屈な業務のみ。そしてその業務もカルマにとっては簡単と来た。

 それならばカルマにとってもうこれ以上この地位にいる理由も無いわけだ。


 カルマには無駄に行動力まで備わっている。そのため思い立ったら即行動、自分に必要な荷物だけ持って街を出た。

 宛もなく、ただただ刺激を求めて絶対に賢者カルマ・エルドライトだということがバレないようにひっそりと。


 カルマが失踪したという事は直ぐに世間に知れ渡った。

 新聞には一面大きく報道され、カルマの失踪を知らない人の方が珍しいと言うくらいになった。

 急に姿をくらましたため、中には魔物に敗北して死んでしまったのではないかと噂する者も居たが、カルマが敗北する程の魔物が居たら、この世界は一瞬にして滅亡するということもあり、その説は直ぐに否定された。


 それから三年の月日が流れた。


 カルマ・エルドライトは少ししか賢者として活動している期間が無かったというのもあり、人々の記憶から消えかけていた。

 最初こそ捜索されていたが、もうカルマを探そうと考える人は誰もいなくなっていた。

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