第14話 邪魔なのはお前

鳶が明日から執務をするため書斎に1週間籠る。だから執務前にリフレッシュをしようってなった。俺たちは街デートに来た、来たまではいいんだが。


「鳶ちゃーん、これも美味しいよ。一口あげよっか?」


「家族以外とシェアするのはちょっと、」


なんで雉もいるんだよ。普通2人きりだろーが、鳶も当たり前そうにしやがって。


「ねぇ燕さん、耳貸して」


「なんだよ」


体を寄せて耳を傾ける。


「執務が終わったら、次は違う所に行こうね。2人で」


コイツ。さてはエスパーだな?よく分かってるじゃねぇか。俺は鳶の耳を引っ張る。


「いて、」


「絶対だからな」


街には水がいっぱいあった。小学生みたいな感想だと思ったか?殴るぞお前。

どこかの国、どこだったっけな。イギリスかイタリアのどっちかだ。その国に似ていた。水の上に家があるわけじゃないが、橋が2km間隔であった。


「あ!?」


雉がいきなり大声を出す。


「うるせ」


「オオワシっちに貰ったお小遣い、なくなっちゃった」


しょうもねぇから俺は雉に腹パン3回をかました。手が出るのは日課だから、特に鳶も心配していない。


「私の分あげようか?」


「うぅ…、先に心配して欲しかったなぁ。貰うけど」


鳶が雉に金のコインを数枚渡す。ここのコインの価値は素材で決まるんだと。

アルミは1円〜5000円の価値。銅は1万〜30万。銀は50万〜90万。金は100万〜900万程度。ダイヤは1200万〜5000万。数はきっちりしていない。店の商品は分かりやすいように、アルミのコイン何枚と値札がつけられている。


「雑貨屋行こうぜ、レターセット欲しい」


「ちょっと待て燕、今日は行かない方がいい。なんでか分からないけど、俺の勘がそう言ってる」


どこまで俺の邪魔すんだよコイツは。好奇心で俺を殺すようなヤツだ。この言葉さえも怪しく感じる。眉間に人差し指を置いて、なんかカッコつけてるし。


「はぁ?お前の勘ってだけだろ。行こーぜ鳶。おい、鳶」


手を引っ張るが動かない、その代わり心配そうに俺を見ていた。


「雉さんは占い師だから、聞いた方がいいんじゃないかな。今日はもう帰ろう?レターセットはベニヒワさんに頼めばいいよ。今の私じゃ燕さんを守れない」


鳶と手を握り合わせる。こ、恋人繋ぎってヤツだな。


「ごほん!ごほっ!うぇっ!お"ぇっ!俺の事、忘れてなぁい?」


「後半ただの嗚咽だろ」


「すごい咳払いだなぁ」


城に帰りつくと、鳶は使用人たちにお土産を渡しに、雉は占い部屋に籠って本を読み始めていた。俺は調理場に用があるので、調理場に行く事にする。

フルーツとレア肉を買ったんだ。なんの肉かは食べるまで分からねぇ。そもそも、その肉の味を知らなかったら、分からず終いのままだよな。


「誰もいねぇのか」


時間帯的に城中を掃除しているのかもしれない。フルーツと肉を冷蔵庫に入れようと、袋から出した。


「ギャルルル」


「マードレお前なぁ、朝夜に贅沢なもん食わせて貰ってんだから狙うなよ。アッチ行け。しっ、しっ」


「グオォーン」


「遠吠えしてもダメだかんな」


ライオンの鳴き声はまあまあデカい。雉の叫び声より全然マシだけど。マードレがフルーツの匂いを嗅ぐと、お前マジでコレ食うの?と言う顔で見てきた。腐ってはなさそうだが。ライオンにとっちゃあ悪臭なのか。

フルーツの名前は『アフロディジアコ』。見た目はマンゴーに近く、味は林檎やイチゴのように甘酸っぱいらしい。

店で買った時、絶対にカップルで食べろと言われた。カップルが更に仲良くなるほど美味いのか…。鳶と試したい。

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