ワン ミニッツでおさまらない恋のはなし ~never endingダイスキ / 1分で読める創作小説2025~

尾岡れき@猫部

1分じゃ読めないお手紙のお話


「……あ、あの! これ! 後で読んで欲しいから、その――」


 差し出された手紙を見て、僕はふぅーっと息をいた。

 いや、こういうシチュエーションには慣れている。


 今、僕の隣に立っている親友。砥坂賢太郎はイケメンという言葉じゃ足りないレベルで美男子だ。そりゃ読者モデルをするぐらいの顔立ち。父はアイルランド人、母は日本人というハーフ、帰国子女というステータスが、なお彼の人気を押し上げる。


 だから、時々あるんだ。


 カラオケをセッティングのお願いやメッセージアプリ、LINKのIDを教えてくれであったり。基本的には、お断りをする。賢太郎の個人情報を親友という理由で、横流しする理由にはならない。


 でも、ラブレターは別だと思う。相手に届けたい。でも、その勇気が少し足りない。だったら、それを無下に断るのも違う気がして――僕は、それが無駄足になることを知ったうえで、賢太郎へのラブレターを受け取る。親友の想いがどこに向いているか、知っているから。


(……でも、今回は流石にこたえるなぁ)


 クラスで1番、仲が良い美琴さん。そうか、君も賢太郎のことが好きだったのか。自分のなかで気持ちを咀嚼して――なんとか納得する。


 一緒に漫画やアニメの話しで盛り上がった昨日のことが砂と消える。いや、無理矢理この感情を砂に埋めた。玉砕する前に、答えが知れた。それで良いじゃないか。


 でも、横に賢太郎がいるんだ。直接、渡せば良いのにと思うけれど――告白すらできなかった僕に何も言う資格はない。


「はい、賢太郎」


 僕は親友に、猫で溢れた可愛らしい封筒を渡す。きっと、いつも通りに笑顔を浮かべることができているはずだ。


「は?」

「ちが、謙介君、それは――」


 美琴さんが、顔を真っ赤にしている。部外者は、ささと立ち去るべきか。僕は踵を返そうとして――賢太郎に手を引っ張られた。封筒を僕に押しつけられる。


「ちょっと賢太郎?! 読みもせずに返すのはひどくない?!」

 どんなラブレターでも、最低1分は目を通す。その言ったのは賢太郎じゃ――。




「ちゃんと、見ろって」

 封筒には、美琴さんの丁寧な字で宛名が書かれていて――。






「橫溝謙介君!」


 封筒に書かれた僕の名前を、美琴さんがあらん限りの声で呼ぶ。むしろ叫ぶ。








「私、謙介君のことが大好き! お友達のままじゃイヤなんです! 私のありのままの気持ちを手紙に書きました! まずは読んで! それから、後で良いから気持ちを教えて!」





 ――このかん、まだ1分間ワンミニッツ

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