11話 捜索 ~地下 スタッフルーム / 倉庫~

 1階は残るは食堂だけであったが、先ほどプールにてユウリくんが言った通り、先に地下の倉庫の方へと僕達は向かった。

 地下に向かう階段は屋上と同じように1か所しかなかった。方向も屋上と同じだ。

 降りて真っ先に見えたのは真正面の大きな扉だ。

 だがどう見ても倉庫ではなかったので後回しにして探す。


 階段から出て右に向かい、最初の角を曲がった先に見つけた扉。

 その部屋には珍しくネームプレートがあった。


「スタッフルーム?」

「ああ、ここは入れませんよ」


 突然、どこからかクウギョが現れた。


「ここはワタクシ達が仕事をしたり休んだりしている部屋です。なので皆様とは関係ない部屋になります」

「まあそりゃクウギョも疲れるっすよね」

「お仕事お疲れ様です」


 サスケくんとヒナタくんが納得したように頷く。

 その横で、ユウリくんが僕に耳打ちをする。


「……ね。クウギョ、複数体いるでしょ」

「……確かに。達、って言ってたしね」


 ユウリくんの推理は当たっていた。さすがだ。


「ねークウギョ、聞きたいんだけどさー」

「はい、何でしょうか?」


 ユウリくんは扉の前で足を上げる。


「この扉をぶち壊して中に入ろうとしたりしたら処刑されたりしちゃう?」

「あー、別にそういうことはないですが……やめてほしいものですね。休んでいるワタクシとか起きてしまうかもしれませんし、壊した扉の修理とか大変になるので」


 クウギョは困ったような声を放つ。


「皆様が寝ている間に修復作業をするとはいえ、量が多かったら修理が間に合いませんからね。不用意な破壊は止めていただけると助かります」

「ふーん、そっかー」

「それにここなんて見たところでツマラナイものですよ」


 えっほえっほと作業するクウギョ。

 すやすやと眠るクウギョ。


 ……いや、ちょっと見てみたいぞ。

 マスコット的な見た目がそう思わせるのだろうが。


 そう変なことを考えていたところで、ツバメくんがクウギョに問いかける。


「クウギョ、倉庫を探しているんだがどこにあるんだ?」

「倉庫はこの部屋の隣ですよ。ああ、こちらは24時間開放しているので好きなだけ入っていただいて構いませんよ」

「分かった。ありがとう」

「ん? ということは24時間開放じゃない部屋もあるってことですか?」


 ヒナタくんが疑問を口にする。


「ええ。先にお伝えした通り、皆様の寝室は定時にロックいたします。それ以外ではありません」

「そうなんですね」


 つまり部屋がロックされてもどこでも入れる、ってことか。


「それでは、この辺でワタクシは他の部屋を見て回りますね」


 クウギョはヒラヒラと空中を漂ってどこかへ行ってしまった。


「じゃあ倉庫に行きましょうっす」


 サスケくんに促され、僕達は倉庫に向かった。


 倉庫の中は広大だった。

 ドライバーやのこぎりなどの工具や、タオルや石鹸などの日用品、チハヤくんが言っていた通りに水着もあった。何に使うのかペンキやらロープ、ピアノ線なんかもあった。

 ただ色々と探し回ったが、どうやら電子機器そのものと食料品はなかった。電子機器そのものと分類したのは、電源コード単体やケーブル、トランスなどの小物はあったが、じゃあそれがあったからといってスマホの代わりが作れたりするのか、というのは多分難しいだろう、と思ったからだ。僕はそういうのに詳しくないから推定にはなるけれど。


「なんか修理とかそういうのは出来るけど、新しくモノを作ることは出来なさそうだね」


 ツバメくんも同じようなことを思ったようだ。


「そうだよね。意図的にそうしているようなラインナップっぽいよね」

「CPUがないから時計も作れないしね。きっとボクの『能力』の存在意義を保とうとしているんだろうね。ふふふ」

「じ、自虐的なのは止めようよ……ネコで『能力』のない僕しかその言葉は言えないよ……」


 ツバメくんが病みモードに入った辺りで気持ちを切り替えるべく、僕達は次の部屋への探索に向かうために倉庫から出た。

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