第14話 密会、後輩ギャルにバレる
それからは、日中は紫苑さんとのお付き合い。放課後には部室で晴との密会が、日常になった。
朝の会話から始まって、昼のお弁当タイム。授業後になると部室におもむき、晴の求めに応じる。
丁寧で優しくて俺を尊重してくれる紫苑さんに対し、放課後の晴は一日の我慢を発散するように熱く激しく情熱的。
思春期男子真っ盛りの俺がたじろぐほどの勢いなのであった。いや、キスまでだけど。
◇◇◇◇◇◇
「じゃあ、放課後になりましたので、今日はここで。文芸部の活動、頑張ってくださいませ。如月さんと離れるのは寂しいですが、私の一存というわけにもいきませんので」
笑顔で俺を見送ってくれる紫苑さん。文芸部の部長が晴だとは知っているはずだが、その晴と部室内で抱き合ってキスまでしていることは想像外かもしれない。仮の恋人関係で本命は晴と納得してくれてはいるが、バレたらその極上の微笑はどう変化するのだろうかと、怖さに震える。
部室と訪れると、いつものことながら、いきなり晴が抱き着いてきた。
有無も言わせぬ、いきなりのキス。それもねっとり舌を絡めるディープなもの。
この数分のキスを三セット。それからコーヒーを入れて、ソファの上での愚痴タイム。
紫苑さんばっかりとか、そういうのを吐き出したのちに、また抱擁とキスタイムに突入する。
ルーチンと化したタイムラインがすでに出来上がっていた。
その、愚痴が終わった後の恋人タイム。
いつものように俺と晴が絡み合っていたある日のことだった。
バタンという音に――。
「ちゃーす。久しぶりなんすけど、マンガ借りに……」
突如現れて部室に入ってきたのは、金髪ゆるふわウェーブに着崩した制服がカジュアルな、一見してそれとわかる――白ギャルだった。
驚いてカラダを離す俺たちと、白ギャルの目が合う。
「……ふーん」
白ギャルは、興味深そうにつぶやいたあと、気の強そうな切れ長の目を細めて、口角を上げた。
「ヤリ部屋なんだ、ここ?」
「ヤリ部屋じゃない!」
俺は、見知らぬ白ギャルの登場に驚きながらも否定したが、その赤色蝶ネクタイの後輩は続けてきた。
「ヤッてたじゃん、抱き合ってキス。如月先輩と晴部長ってそういう関係なんだ? 『姫宮様』の紫苑先輩がいるのに? ヤるもんだね?」
「……。突然なんの用なの、アイリさん」
「……ヤリ部屋だったんだ、ここ。ぜんぜん、気づかなかったわ」
晴の質問には答えずに、アイリと呼ばれたその白ギャルは、再度興味津々という目線を俺たちに送ってきた。
晴が、普段には見せない威厳のある態度で応対する。
「アイリには関係のない話よ。中途半場に首を突っ込まない方が身のためだから」
「はいはい。アタシはマンガ借りに来ただけだから。用が済んだらオイトマしますわ。ここ、アツいし」
ぱたぱたと、手で自分に風を送りながら、わーっかりましたとばかりに部屋内のマンガの物色を始めた。
「……早めに済ませてね。正直、邪魔だから」
「それが唯一の後輩部員に言う言葉っすかね?」
「幽霊部員で全然こないじゃない」
「まあ、そっか(笑)」
けらけらと笑うアイリを一瞥して、じゃあ邪魔がはいったからお先にと、晴は部屋から出て行ってしまったのであった。
◇◇◇◇◇◇
晴が出ていってしばらくは、マンガの物色をしていたアイリだったが、やがてその動きを止め……。しばらく何やら考えている様子の後、いきなりソファに座っている俺に向き直って、予想もしていなかった言葉を発してきたのだ。
「アタシ、とっちゃおうかな?」
「……?」
俺が首をかしげていると、そのアイリは、極上の獲物を見つけたといわんばかりに、ニヤリと続けてきた。
「如月先輩を」
いきなりの単語に驚き硬直し、そして何を言ってるんだとアイリを見返す俺。
そんな様子を気にすることもなく、アイリはすたすたと近づいてきて、いきなり俺の上に片膝を乗せてきたのだ。
「何の……真似だ?」
「如月先輩。アタシのモノにならない?」
「いきなり……だな?」
「まあ、そうだね? で、返事は?」
「お前、そんなに美人なのに、なんで俺みたいなのが……欲しいんだ? 紫苑さんや晴は、成り行きから理解できるんだが……」
「他の人のモノって欲しくなるタチなの。しかも如月先輩は、紫苑先輩と晴部長の二人のお手付き。これは……じゅるっ」
アイリが舌なめずりをすると、口内にたまってただろう唾液の音がした。
「困る。というか、正直に言うと迷惑だ」
「そんなこといわずに……さ?」
アイリが、手で俺の首を撫でながら、目配せしてきた。
「申し訳ない。早くどいてくれ」
「……」
アイリはしばらく俺の顔を見て、脈なしだと判断すると、いきなり別方向のセリフを言い放ってきた。
「実はアタシ、彼氏いない歴=年齢でね」
「つくれよ。そんなに美少女なんだから好き勝手に」
「今まで寂しい想いして、夜も一人で慰めるだけでね……」
頬を赤く染めて、恥ずかしいという顔を見せるアイリ。演技なのか、本気ではにかんでいるのかの判断は、モブの俺にはつかない。
「だから、女性に慣れた如月先輩に一肌……脱いでもらおうと、ね?」
「童貞の俺をどうしようってんだ、このっ……美少女ギャルがっ!」
言うに事欠いて、罵り単語が出てこなかった。
「あ。」
「なに……?」
「一肌脱いでじゃなくて、一本脱いで……だった」
「ふざけろっ! おちょくってんのかっ!」
「いや、真面目な話だから! ちゃんと聞いて! このままだと私、処女のまま男も知らずに年老いて……」
「だから、勝手に男作って、ホテルでもどこでも好きなところで励んでくれ」
「だから……その男が……ね」
アイリが、目に手を当てて、ぐずぐずと泣きまねを始めた。今度は、俺にもはっきりと演技だとわかる。
「同情できない。それだけの見栄えがあって男に困るとは思えない」
「…………」
アイリが泣き真似を止めて、打ち明けるという声音で言ってきた。
「……アタシ、ヒミツのコト、したいんだ?」
「秘密?」
「きっと、ドキドキしてゾクゾクして興奮して気持ちいいよ。だからなろうよ、セフレ」
「ドキドキも興奮もしないから」
さすがに相手するのにも飽きてきたというか面倒になったので、ソファを立ってアイリを放置し、出口に向かう。
「あきらめないから。つーか、ガチで欲しくなった! カラダ、うずくわ!」
続けて、後方から名乗り声がした。
「アタシ、
廊下に出てバタンと声をシャットアウトしたのだが、その名前がやけに脳内に残って、俺はまた頭を抱えることになったのだった。
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