禁断のダクネス
森崇寿乃
第一章:街の喧騒と内なる獣
おお、天にまします御方よ。この
我が名はダスティネス・フォード・ララティーナ。陽の光を浴びて輝くべき血統に生まれながら、その魂は
アクセルの街、その心臓たる冒険者ギルドは、今日も欲望と活力の熱気に満ちていた。エール樽の転がる音、高らかな笑い声、武具を誇示する金属音。それらが混濁した喧騒の中、私はただ一人、窓から射す光の筋を虚ろに見つめていた。周囲から寄せられる視線は肌で感じている。
演じている。私は、彼らが望む偶像を。
その視線が肌を這うたび、私の内なる獣は偽善を嘲笑い、鉄の鎧の下で身を
「おい、ダクネス。いつまでそこで腐った油みたいな顔してやがる! 今日の依頼に行くぞ、さっさと準備しろ、この変態女騎士が!」
その声は、私の白昼夢を無慈悲に引き裂いた。我が主、カズマ。 この男だけが、私に投げかけられる無数の視線を透過し、その奥にある真実の姿を、まるで汚れたガラス玉でも見るかのように侮蔑の眼差しで見つめてくる。彼の言葉の
努めて冷静な声を繕い、彼の待つ席へと向かう。そこには、いつもの混沌があった。
俗世の快楽に身をやつし、堕ちてなお神性の残り香を漂わせる女神アクア。彼女は新たな宴会芸の資金を得ようとカズマに泣きついている。そして、一日に一度きりの破滅の祝祭を前に、その紅き瞳を妖しく輝かせる魔導の少女、めぐみん。
彼らで構成されたこの歪な日常。それこそが、聖と俗の狭間で引き裂かれそうになる私を、かろうじてこの世に繋ぎ止めている。グロテスクで、しかし愛すべき縁なのである。
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