ぐうたらサボりたいだけの僕ですが、読書喫茶室はじめました。はっちゃけ中の企鵝が小説紹介してきます。宣伝効果?知らんけど。

獣之古熊

第1回 ぐうサボ 企鵝読書喫茶室(ペンデヴァ―ブックカフェ)

#1-A 残念エルフ姫ってなんですか?!そんなの聞いてませんけど……【神世界転生譚】ユウナと不思議な世界

 ここは敗者たちの集うアフターサービスルーム――ではなく、世の名作が企鵝ペンギンの嘴から飛び出してくる企鵝読書喫茶室ペンデヴァーカフェ


 エプロンを身に着けた企鵝店長ペンギンマスターが嘴の上にサングラスを載せ、空のグラスを磨いている。DJがレコード盤を回すようにキュッ、キュッ、と音を立ててリズムを刻んでいるが、店内に流れるジャズ音楽とは一つも噛み合っていない。


 いつもと違うのは、本日貸切という札をぶら下げた企鵝のぬいぐるみが扉の前に立っていることくらいか。店内に置いてもあまり意味はないと思われるが、それを気にする者は誰もいない。


 カウンター上に置かれた空のグラスに企鵝店長が嘴から虹色に輝く液体をなみなみと注いで満杯にすると、まったくこぼすことなく器用にその嘴でグラスを前へと押し出した。


 バーカウンターを挟んで企鵝店長の目の前に座っている、黒髪のボサボサ頭の少年がグラスを手に取ると、それを一口、コクリ、と飲み下し、途端にだらり、とその液体を口の端から垂らす。


「ペンデヴァー。これ、飲んで大丈夫なやつ……?」


「グァ!」


「え? 希望の樹になった実を絞った、寿命が半分減るジュース? え、そんなの困るよ。寿命が半分減ったら、僕のサボる時間も半分減っちゃうじゃん!」


「……グァー」


「あれ、ペンデヴァーが萎れて枯れちゃった。なんで?」


 そのとき、カウンター奥にある、スタッフルームと書かれた半分ほど開いた扉の向こう側から、じっとこちらを見つめていたドラゴン仮面を被った黒スーツ姿の男の瞳がキラリ、と怪しく光った。


*-*-*-*-*


「グァ……」


「ところでペンデヴァー、どうしたのさ。そんな、仲間になりたそうな顔で僕を見て」


「グァァァッ」


「え? ライオンになりたい?」


「グァァ」


「無理だよ。だってキミはペンギンじゃん? 銀色のたてがみなんて生やしたら、ただのヤンキーペンギンだよ? イワトビペンギンもビックリなペンデライオンになれるかもね? あ、モフモフ度は高まるかもしれないけどさ」


「グァ……」


「こんなぐうたらサボってるやつなんかより、エルフのお姫様と一緒に旅したかった、って、じゃあ一緒に行ってくる?」


「グァッ!!」


「えぇ……そのうちペンギン出てきちゃったらどうすんのさ……」


「グァァッ!」


「残念エルフ姫とペンギンの大冒険? いやそれはなんか違う物語になっちゃってない? 大丈夫?」


「グァァ……?」


「そんな目で見てもダメなものはダメだよ? キミが乱入したらやりたい放題じゃん」


「グァッ!?」


「え、それをお前が言うなって? 酷いなぁ。でも、そろそろ真面目に紹介しないと皆に怒られそうだから、ほら、ペンデヴァー、頼んだよ」


「グァッ! グァグァッ! グァグァグァグァーッグググァ、グググァッ! グァァァ、ググァ、グググァァッグァッ!」


「ここからは私めが解説いたしましょう」


「え、ちょっと待って。キミ、さっきからいたのは気づいてたけどさ、ここで出てくるんだ?」


「なんということでしょう! 十三歳という若さで病死した少女は、死神のような怪しい神様から記憶を持ったまま生まれ変わらせてあげるよ、なんて言われ、家族会いたさにそれを受け入れるのですが……。転生した先は、ゲームで見たことのあるような、エルフという種族が暮らす世界。そこでも彼女は、余命百年と、生まれながらにして長命なはずのエルフの中でも短命であることが判明いたします」


「うわぁ。神様が今よりも長生きできるようにサービスするって、そういうことだったんだ……」


「グァ……。ググァッ、ググァ、ググググァァ! グァッ!」


「エルフの姫として誕生した彼女はユウナと名付けられ、とある儀式によって急成長を遂げますが、父であるエルフの王に可愛がられるどころか、跡継ぎとしても期待できず、言法セイズという魔法も使えないことがわかると、なんと、王位継承権を剥奪されたうえで追放されてしまいます」


「はぁー、これだけ聞くと悲劇みたいに見えちゃうけど、でもユウナちゃんは百年は生きられるって、ものすごくポジティブなんだよね。めちゃくちゃいい子じゃん! っていうか、残念エルフ姫っていうけど、僕ほど残念じゃないとか、ペンデヴァーは余計な一言は言わなくていいからね?」


「グァッ! グァァァ、ググァ、グググァァッ!」


「しかしユウナ姫は、これまで病気で歩くのも大変だったことを思えば、自分の足で歩けることが楽しいと、ちょっとした冒険心を抱きます」


「うう、僕もう泣いちゃいそうだよ。それでそれで?」


「ググァッ! グァ、ググァ、グァァァァッ!」


「ユウナはマリーカというエルフの女性をお供に、マリーカの故郷のへと向かいます」


「追放って言っても行くところあってよかったね。で、いきなり、仲間になりたそうなライオンさんが出てくるんだっけ。あ、それでペンデヴァーはそれを真似してたのか」


「グァッ!」


「以上、解説終わります」


「え、ちょっと待って、早くない? その先は? 続きが気になるんだけど!」


「グァァァッ!」


「続きは私の会議システムのCMをご覧いただいて――」


「ああ、あれ、×ボタン出てこない詐欺CMじゃん。契約するまで閉じられないとか、とんだ爆弾だよね。あ、でもここにいる皆は直接Resetterさんのところで読めるから、×ボタンの出ないCMが始まっちゃう前に、早くここから離脱したほうがいいかもよ!」


*-*-*-*-*


著:Resetter

『残念エルフ姫ってなんですか?!そんなの聞いてませんけど……【神世界転生譚】ユウナと不思議な世界』


https://kakuyomu.jp/works/16817139555606300966

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