「え、じゃあ星座も血液型も同じってことだね。」

「え、じゃあ星座も血液型も同じってことだね。」

「そうだね。」

 基とは片手で数えられるほどしか会っていない。僕は真剣に恋をすると、どうも駄目になる。普段はどちらかというとのんびりしているくせに、せっかちになってすぐに成果を欲しがってしまう。

「やばい。めっちゃ大きいね。」

「こっちの台詞だよ。」

 お互いの持つモノの大きさを指摘し合う。基は大きいのがコンプレックスだという。かつてウケこそ求められればしたけれど、普段は専らバニラセックスだった。タチに至ってはお尻の穴に入れるのが気持ち悪くて苦手で、でもそんな僕も歳をとってこの頃タチをするようになった。

「ねえ、付き合わない?」

 掘られながら白目を剥いている基に思わず尋ねる。

「あ、うん。え。うん。」

「え、いいの?ほんと?」

 虚ろな基にさらに腰を打ちつけたくなった。かわいくて仕方がない。

「焼き鳥食べて解散にしない?」

「いいね。ビール飲みたい。」

「呑もう。」

 お互いに果てたあと部屋を出る支度をしながら話す。フロントで受付中の小柄な男二人とすれ違う。

「さっきのお仲間だったね。高校生みたいに見えたけど。」

「ね。」

「町田いい街だなぁ。ちょうど良くて。」

「何でも大体あるね。」

「立川とかも似てるけど、ちょっと神奈川感あるっていうか。」

「天一。」

「天一行ったことない。」

「うまいよ。」

「気になる。次は天一だな。」

「今日は焼き鳥で。」

 チェーンのどこにでもある店だが安心感がある。土曜だったので四人テーブルをパーティションで仕切ったような狭い席に案内された。

「あの人使って捕まったのって絶対ラッシュだよね。」

「使ったことある?」

「ないよ笑」

「僕、一回使ったことあるよ。」

「まじ?」

「なんか相手が使ってて、流れで。」

「やばい。どう?」

「うーん。俺はよく分かんなかった。」

 仕切られた逆側の女性二人が僕たちの会話を明らかに盗み聞いていて、僕らが先に話していた話題をそのあと話しているということが複数回あって気分が悪かった。

「さすがにレトロゲーの話題なんて被らなくない?」

 いなくなってから文句を言う。

「あのさ、近くにビールおいしいってとこあるから行ってみていい?」

 基から二軒目の誘い。

「いいよ。」

「さくっと飲んで帰ろう。」

 基とはこの日以降会えないままに関係が途切れてしまった。基が多忙で次のデートがなくなってリスケをせっついたのも悪かったし、僕と恋人同士になるつもりはきっとなかったのに付き合うと言わせてしまったのもいけない。

 リスケの日のメッセに既読がつかなかった。坂元さんにその場で連絡したら通話で話を聞いてくれた。

「これから仕事なんだけど、府中来れる?休憩時間で良かったら話聞くよ。」

「行く!」

 こんなフェードアウトはホモの知人関係なら普通にある。段階を踏めずに、打ち上げ花火のように僕だけの恋は夜闇にハジけた。基の穏やかでにこにこした笑顔とも清潔で好みな身体とも、もう会うことはないのだ。

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