幕張武侠警察ドラゴン・プレックス

『チバシティ』誕生

　21世紀初頭、中国大陸は、泥沼化した内戦の炎に焼かれていた。

　サイバネティクス技術が兵士を『超限兵士』と呼ばれる半神半人の怪物へと変え、戦場は地獄と化した。

　この終わりなき混沌の中、一人の男が立ち上がった。王虎禅（ワン・フーゼン）。

　彼は大陸に見切りをつけ、数十万の民と共に海へ活路を求めた。

歴史上類を見ない民族脱出計画――後に『大遷徙（だせんし）』と呼ばれる、壮大な船団の旅が始まった。

　2027年、彼らの艦隊は日本、東京湾に姿を現した。

　嘆願でも亡命でもない。彼らは千葉・幕張の浜辺にその巨船を意図的に座礁させ上陸。瞬く間に幕張メッセを中心とした一帯を占拠し、難攻不落の橋頭堡を築き上げた。

　日本政府は武力衝突という最悪の選択を避ける。

　そして王虎禅との間に密約を結んだ。

　こうして、日本の地に治外法権の巨大スラム――『チバシティ』は産声を上げたのである。