第4話 死後のご紹介
死後のご紹介
<<死んだあとってどうなるの?>>
生前に1人の生徒から聞かれた言葉だ。
小学生という純粋の塊から聞かれた彼女は、実際に見た事がないからか、正しい回答がなんなのか分からず少し息を呑んで女は答えた。
女
「どうなるんだろうね、先生は行った事がないけれども、良い行いを続けた人はきっと天国へ行けるだろうね!その為にはいい事と悪い事が何か知るためにも沢山のことを勉強して知っている事を増やしましょう」
ニッコリとした笑顔で綺麗事を言ったことに対し少しの罪悪感を持ちながら、こんな答えしか持ち合わせていない引き出しのなさを悲観した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
女は住んでいる家と同じベッドで目を覚まし不思議そうな顔をしたあとに、眉間をグシャっとしたとびきりのしかめっ面を披露した。
女
「なんで生きてるのだろう、、」
そう呟いた彼女は夏の休暇に合わせた旅先で、子供を助けようと海へ飛び込み流されたのが最後の記憶だった。
きっと旅先で泊まっている柔らかい高級のベットや病院のベッドの上なら理解が及んだだろうが、相変わらず少し硬く寝づらい1人暮らしのベッドの上で起きるとは思わなかった。
考えても仕方がない、、きっと助かったのだろうと気持ちの整理をつけ携帯を開いた。
携帯には[6月21日(月) 5:45]といつも通りの表示と彼氏から日課になっている「おはよう」のメッセージ通知がきており、電源を入れたテレビからは何気なく毎日見ているニュース番組が流れ、外からは年がら年中出している「竹や竿だけ〜」と金物屋の音声が聞こえてくる。
これは夢なのだろうかと頬をつねってみても引っ張られた感覚があり、数秒してからじんじんと痛くなった事から旅行に行ったこと自体が夢だったと思う事にした。
何はともあれ、当たり前に月曜日は出勤日である為に朝の準備を始めた。
いつもの食パンをトースターに突っ込み毎週金曜日に特売される卵をフライパンの上に乗せ朝ごはんを作った。
長年愛用しているポーチの中から化粧道具を取り出して、メイクという名の顔面工事を始めた。
今日も自己評価満点の顔を作り終わり、荷物をまとめ、部屋に「行ってきます」と小声で伝えて鍵を閉めた
普段より数十分早く外へ出たので、まだ通った事のない道を使うことにした。
今の職場に移動してから半年が経ち、大体の方角は分かっているからこそ出来る事だろう。
知らない道や知らないお店を余裕のある朝に見つけるのが私にとっての三文の徳なのだ。
?
行った事のない道に出る事ができない。
別に早起きする事が多く、全部の道を知っているわけではない、というか知っている道しかないのだ。
(やっぱり変だわ、私は死んだのかしら)
現代に染まった彼女は携帯を開きAIへチャットで問いかけることにした。
女
『人は死んだらどうなるの?』
AI
『これはすごく大きくて、人によって信じているものも感じ方も違うテーマだね。誰も行った事がないから解析できずにいて、現代でもまだ解明されてないのは確かだよ。だからこそ、良い事をし続ければ天国へ行けるんじゃないかな!その為に必要な知識を抜粋してみたよーーー」
いくらフランクなAIでも、解明されていない事にざっくりとした答えを出されて唖然としてしまった。
頼れるものが少ない彼女は朝の忙しい時間で申し訳ないが、彼氏に電話をしてみることにした。
---プルプルプル---
彼氏
「どうしたんだい?珍しいね」
女
「変な話をするのだけど、人って死んだらどうなると思う?」
彼氏
「ははは、急にどうしたんだい?僕も行った事がないから分からないけど、きっと毎日良い事をすれば天国へ行けるさ」
そう笑いながら話してくれた彼氏には申し訳ないが、確信と同時に女は絶望してしまった。
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