第33話 プロジェクトオリジン
ハルは不敵な笑みを浮かべると、奴はいきなりネックレスを取り出した。
それは緑色の宝石が埋め込まれた綺麗なものだった。
「なんだそれは」
「これは、オリジンと呼ばれる生物がとても執着する代物さ。あ、オリジンって知ってる?すごい力を秘めた生き物の事でね、その研究を任されてるんだよ」
「どうでもいい、てめぇは何がしたい」
「・・・・・・・だから実験だよ、そして君は被検体になってもらうよ」
そう言うと、ハルは持っているネックレスを粉々につぶして見せた。
そして、粉々になったネックレスを俺へと投げつけてきた。
唐突な行為に動揺していると、奴は俺に向かって手を振って来た。
「じゃあ頑張ってね、自称メフィウス」
そう言い残すと、ハルは俺の前から突然姿を消した。
まるで瞬間移動ととも思えるその力に疑問を抱いていると、背後に殺気を感じた。
振り返ると、そこには無数の【風の刃】が迫ってきていた。
すさまじい量の攻撃は到底避けられるものではなく、大地や草木を削り取りながら迫ってきていた。
異常なほどの魔法にすかさず魔法の無力化を行使した。
だが、目の前の風の刃が無効化される事は無かった。
それは、この魔法が俺の支配をはるかに凌駕するものである証明だった。
つまり、オリジンという存在が予想よりも強力で侮ることが出来ない存在であり、俺はすぐに防御態勢をとった。
せっかくもらった服が犠牲になるのは気に食わねぇが、現状この方法しかない。
そうして、俺は肉体を捨て、その身をMPそのものと同化させる手段をとった。
もちろん、それでもただでは済まないだろうが、肉体が切り刻まれるよりかはいくらかましだろう。
そして、ある種の昇華状態へと移行した俺は、迫りくる風の刃をやり過ごすことに成功した。
すると、本来ならば切り刻まれるはずの服が、俺の能力と同調するように風の刃を無効かさせる事に成功していた。
思えばブランがこの服は特別な素材で作られているといったな。
それも影響しているのか、俺の肉体超越の力と同調したおかげで俺は全裸になる事を免れた。
しかし、攻撃を回避したのはいいが、現状が好転したわけではない。
目の前には人の形をしてはいるが、人とは比べ物にならない程の魔力を持った存在が近づいてきている。
おそらく、ハルが俺に投げつけたネックレスに引き寄せられて来ていると思われるが、その光景はまるで自然災害そのものに見えた。
台風の渦の中心に人の姿があり、それがゆっくりと歩み寄ってきている。
常人なら詩を覚悟する光景、いや、すでに命が尽きているはずだ。
だが、この状況は俺の目的を果たすことが出来る絶好の機会でもあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます