第31話 奪還

 その瞬間、今いる場所がすさまじい風の魔法で支配される光景が見えた。

 いや、現実ではまだ起きていないが、そうなるかもしれないという危機感だ。

 そんな気持ちの悪いほどの直感に、俺はいてもたってもいられなくなった。 


「おいてめぇらっ!!」


 声を上げると、その場にいた全員が一斉に俺を見つめてきた。


「今すぐこの場所を離れろっ」

「え、なんでですかぁ?」


 そばかす女は、食べ物を食い散らかしながらのんきな事を言っていた。

 まぁ、詳しい説明をしたところで、こいつらには到底理解できない事だ。

 ならば、強硬手段に出るしかない。 


「おいエスカ、ここにいる奴ら全員連れて全力で逃げろ」

「は、はいっ、わかりました」


 エスカは俺の言う通りに、そばかす女とコカゲを抱えると、そのまま走っていこうとしたのだが、寸前のところで立ち止まった。


「あのっ、マスターはどうされるんですか?」

「俺はここで、オリジンの実態を確かめる、とっとと行け」


 そうこうしているうちにもオリジンは異様なほどの魔力を放っており、奴の周りには風の魔法がぐるぐると渦巻き始めていた。


 異様な光景ではあるが、それが魔法である事も間違いなさそうな様子だった。


 それは、徐々に規模を拡大していくと共に、時折暴走するように風の刃をまき散らしていた。

 現時点の規模だけで言ったら高位の魔術師と遜色ないレベルだったが、吹き荒れる風の渦は徐々に力をして言っている様子だった。


 さながら、大災害でも引き起こす前兆のような光景の中、周囲にはいまだにシルドラの兵士と謎のローブをまとった奴が残っており、それらはオリジンを観察している様子を見せていた。


 オリジンの能力を確かめようとしているのか、それとも別の目的か・・・・・・?


 いや、まぎれもなくあのオリジンをたぶらかし、その身に宿る力を引き出そうとしているのは間違いない。

 そして、ローブの奴がネックレスをつかい、オリジン特有の【執着心】を利用して暴走しているというわけだ。

 奴らはオリジンの暴走をあえて引き起こし、その力がどれほどのものかを試そうとしている。

 

 まぁ、俺の目的としてはオリジンの奪還だ。

 

 実験だのなんだのはどうでもいいが、一つ懸念するとすればオリジンの力がどれほどのものかによる。

 それによってオリジンの回収が難しくなるが、もしも、そんな事になった時はあそこにいる奴らだっで無事では済まないだろう。

  

 とにかく今は頃合いを見計らい、確実にオリジンの回収に動くべきだ。






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