第26話 ヴォルト王宮
バーバラから情報を聞き出した後、彼女の体に入った幻覚作用をもたらすMPを浄化し、俺はエスカとそばかす女を叩き起こす事にした。
「おい起きろ馬鹿どもっ」
俺の問いかけに目を覚ましたのはエスカであり、彼女は寝ぼけ眼で俺の顔を見つめてくると、恥ずかしそうに眼を逸らしながら正気を取り戻した様子を見せ始めた。
だが、肝心のそばかす女はまるで起きる様子がなく、気持ちよさそうに眠りこけていた。
何度呼び掛けても起きないそばかす女をエスカに背負わせ、俺たちは店を出て王宮へと向かう事にした。
すると、店先に出た途端、どこからともなく第二王子の妹であるコカゲが姿を現した。
「情報は得られましたか?」
まるで、俺の動向を見ていたかのようなセリフに俺は嫌気がさした。
「てめぇ、隠れてるんじゃなかったのか?」
「あなたの監視が私の仕事ですので」
「そうか、じゃあヴォルト王宮まで案内しろ」
「王宮に何か御用でもあるのですか?」
しらばっくれた様子を見せるコカゲは無表情であり、その真意を確かめようと思い、無言で見つめ続けたものの、彼女は一切表情を変えることはなかった。
「いいから、黙って連れてけ」
「・・・・・・わかりました、ご案内します」
王宮までの道のりは人通りの少ないルートを通っており、加えて、先導するコカゲという女の素性が底知れない事で余計な面倒が起きないかと危惧していた。
「おい、この道は本当に王宮につながってるのか?」
「はい、安心してついてきてください」
あって間もないやつの事をそうやすやすと信用する事は出来ねぇ、こいつもバーバラ同様に無理やりにでも情報を聞き出すか・・・・・・なんて事を思っているとコカゲは立ち止まって振り返って来た。
「あの、良からぬことを考えるのはやめていただけませんか?」
コカゲはこちらの気配を察知したかのようなセリフを言い、その表情は少しだけ険しいものに見えた。
「・・・・・・わかった」
「はい」
随分とまぁ警戒心の強い事だ、さすがは、あの第二王子グルーグに頼りにされているだけはある。
まぁ、何はともあれ目先の目的がはっきりしているから、余計な事は考えず気楽にいくべきか。
そうして、コカゲの後をついていくことしばらく、たどり着いたのは王宮の裏門
だった。
人気は少ないが、しっかりとした門徒衛兵が構えられた裏門に近づくと、真っ先に衛兵共が声を荒げて俺達の行き先を邪魔してきた。
「貴様ら何者だっ」
衛兵の一人が声を上げると、その矛先は俺を向いていた。
「おいコカゲ、早くこいつら何とかしろ」
「何とかするのはあなたです、指輪を見せてください」
「ん、あぁ」
俺は指につけているヴォルト王国の紋章が入っているとされる指輪を見せつけると、衛兵たちは困惑した様子を見せ始めた。
その様子はまるで相談でもしているかのようであり、俺はその様子にいら立った。
「役に立たねぇ下っ端どもだな、とっとと上官を呼んで来いっ」
俺の一言で、衛兵の一人はすぐさま門の警備を離れて王宮内へと入っていった。
その様子を見て、面倒だから強引にでも入ろうかと思っていると、隣にいるコカゲの視線が突き刺さってきていることに気づいた。
「なんだよ」
「良からぬことはかんがえないでください」
こいつ、さっきから俺の心を読んでいるかのように逐一釘をさしてくるような言動があるな。
「だったらなんだ」
「面倒ごとはお嫌いでは?」
「・・・・・・あぁ、そうだ、その通りだ」
「では、大人しくしていてください」
随分と偉そうな態度だ、そんな事を思っていると上官と思われる格好をしたやつが焦った様子で俺たちの元へとやってきた。
すぐにコカゲに目を向けた。
「こ、コカゲ様でしたか、下の者が無礼を」
「違う、彼の指輪を見て」
上官は俺に目を向けると警戒する様子を見せたが、そいつに指輪を見せてやると、驚いた様子を見せた後すぐに頭を下げてきた。
「大変失礼しました、どうぞこちらへ」
そうして、俺たちは王宮へと足を踏み入れることになった。
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