「非凡なエリート高校で、コメディを生きる三人の親友」
くろぬま さやか
第1話: Rainy Day
エリサとフィカとあたしは、校門の前で雨が止むのを待っていた。談笑していると、エリサがうんざりしたように言った。「ああ…最悪、いつまでこうして雨宿りしないといけないわけ?」フィカが答える。「仕方ないでしょ、傘持ってる人誰もいないんだし」。「フィカこそ、なんで忘れちゃったの?」とエリサが尋ねる。「天気は晴れたままだと思ってたんだ…でも、結局こんな土砂降りだなんて」とフィカが答えた。「あんたはどうなの、エリ?」。「あたしの傘はゾウに食べられた」とエリサは気楽に答える。フィカはただ無表情に彼女を見つめていた。「エリ…また変なこと言ったら、その場でボコボコにしてやる」とフィカは心の中でつぶやいた。
二人の話を聞いていただけのあたしは、心の中で考えていた。「実は…あたしは傘を持っている。朝から天気予報を念入りにチェックして、アプリを開いたり閉じたりして、下校時の天気がどうなるか見ていたんだ…でも、それはこの二匹の獣のためじゃない」あたしは顔をそらして、音楽クラブを教えているエカ先生の方を見た。「エカ先生…いったいいつ帰るんだろう?…最悪、先生は毎週水曜日に音楽クラブの顧問だってこと、忘れてた」心の中でそうつぶやくと、いつの間にかフィカとエリサが私を無表情で見つめていた。
「…まただ、この一番のダディ・イシューは、既婚者の男に夢中になってる」エリサとフィカの思考が、偶然にも無意識のうちにシンクロした。「おい、あんたも傘持ってないの?」とフィカがあたしに尋ねた。「うん。あたしの傘はデディ・コルブジェに帽子にされた」あたしは視線をそらさずにそう言った。明らかに嘘だとわかる、この上なく嘘っぱちな答えだった。「デディ・コルブジェが、あんたの傘を帽子にして、ハゲがこれ以上テカらないようにしたってこと?」とエリサが尋ねた。「うん」あたしはまだエカ先生を見ながら答えた。
「ふーん…そうなんだ」フィカはにこっと笑うと、あたしのカバンを素早く奪い取った。「ドラえもんのポケットみたいなカバン持ってる奴が傘持ってないわけないでしょ、マジで、ホラもいいとこ!」フィカはあたしのカバンの中身をあさり始めた。あっという間に、カバンの中から折りたたみ傘を二本見つけた。「ほら…あるじゃん」とフィカは優しく言ったが、その笑顔は今、とても意地悪だった。
「わあ…傘が二本もある。もう一本は誰にあげるつもりかな?」エリサがにやにやしながら扇動した。「…おい、返せ」あたしはカバンを取り返そうとした。「はぁ…絶対これエカ先生のためでしょ、エリ…この愛情不足のガキは、十年近くの私たちの友情よりも、先生を優先してる」フィカは怒って折りたたみ傘を強く握りしめた。「ちょっと待ってよ、落ち着け、姉妹、怒らないで!」エリサはフィカを落ち着かせようとした。しかし、遠くから音楽クラブの部員たちが教室から出てくるのが見え、クラブ活動が終わったことを示していた。
「そういえば、エカ先生のこと好きなら、なんで音楽クラブに入らないの?」あたしと二人が傘をさして学校から出始める音楽クラブの部員たちを見つめながら、エリサがあたしに尋ねた。「だって…興味があるだけでクラブに入っても、その分野で才能がないのにどうするの?」あたしは少し微笑みながら言った。自分自身のことをわきまえている、というサインだった。エリサは黙って、心の中でつぶやいた。「このオタクは、三年間連続でドラムバンドでピアニカのリーダーを務めてるのに、それは彼女が曲のコードを素早く覚えられる唯一の人物だからだ」。「でも、本当の理由は、もう美術クラブで忙しいからでしょ?」とフィカが言った。「うん、それも本当だね」とあたしは言った。
片付けを終えたエカ先生が、生徒たちが挨拶する中、校門の方へ歩き始めた。「はい、気をつけて帰りなさいね」エカ先生は笑顔でそう言った。それを見たエリサは、すぐに私のそばに近づいた。「友よ…この時が来た…」。「ああ…戦いが…始まる」あたしは落ち着いて答えた。一方、フィカは気楽にエカ先生に挨拶をした。「先生、こんばんは」。「お、フィカ、まだ帰ってなかったの?」エカ先生は笑顔で返した。あたしとエリサは、浜辺にいるかのようにリラックスしたフィカを見て、呆然とした。
「はい、だって急に土砂降りになったんですもん、私傘忘れちゃって」とフィカは言った。「ああ、一緒だよ…私も傘忘れちゃった。朝は晴れてたのに、帰りになったら雨が降るなんて」とエカ先生は言った。「それな」とフィカが返した。「それな…今の返事、すごくZ世代っぽいね…『それな、それな、それな』」エカ先生は少し笑った。しかし、エカ先生は気づいていなかった。その「小さな笑い」が、ただ気楽に話したかったフィカに、災いを招くことになるとは。フィカはすぐに私の方を見たが、もう遅かった。あたしの顔は、夫であるゼウスが何度も浮気するのを見つけた女神ヘラのように、フィカへの信頼が崩れ落ちそうになっていた。そしてただフィカを虚ろな目で見つめながら、定規をナイフのように研いでいた。「友よ…落ち着くんだ、友よ…フィカはきっとそんなつもりじゃ…」エリサは緊張した声で言った。
「ああ、そうだ、フィカ、ちょうどここで会ったし、君はIPS-2組のクラス委員だから、明日私の授業の時に、みんなにピアニカを持ってくるように伝えてくれ」とエカ先生は言った。「はい、先生、すぐに伝えますね。それに、クラスメイトはまだここにいるので、きっと手伝ってくれます」とフィカはすぐにエカ先生に顔を向け、あたしとエリサを指差した。
「こ…こんばんは、先生」とエリサが挨拶した。あたしはただ黙っていた。「ああ、こんばんは、エリサ…それで…君は誰だっけ?」エカ先生があたしの方を見て、困惑した表情で言った。それはあたしを、トイレに駆け込む人のようなスピードで、エカ先生にプロマックス級に失望させた。「マルシャです、先生、マルシャ、M-A-R-S-H-A」フィカはパニックになって「親友」の威厳を守るためにそう言った。「ああ、そうだね、ごめん、マルシャ。先生、忘れちゃってた」とエカ先生は気楽に言った。「い…はい、先生…大丈夫です」あたしは作り笑いでそう言った。心の中では「私は…大丈夫…」とつぶやいていた。
エカ先生の奥さんが車で迎えに来た。エカ先生はあたしとエリサ、フィカに別れを告げ、車に乗って去っていった。「みんな…あたし…名前を変えた方がいいかな?」あたしは静かな口調で言った。「またこの変な子が何を言い出すのかしら」またしてもエリサとフィカの考えは同じだった。「な…名前、もう十分可愛いじゃない…エカ先生が忘れてただけだって」とエリサが返した。「いや。名前を変えないとダメみたい」あたしは虚ろな目で言った。「じゃあ、どんな名前にするつもりなの?」とフィカが返した。「…ヤマハはどうかな?」。「バイクのメーカー?」エリサは純粋な顔で返した。「…エリ…ヤマハはピアノのメーカーでもあるの」とフィカが言った。「うん…ヤマハ、良さそうだな」あたしは誇らしげに微笑みながら言った。「とんでもないことするくらいなら、トバ湖に投げ込むからね」とエリサとフィカが声を揃えて言った。
THE END
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