第2話 ​パレット

 冷凍庫エリアで転倒し、身動きが取れなくなった正社員たち。彼らの危機に、課長は苦し紛れに叫んだ。

「お、おい、タカシ! そこにあるパレットを…!」

 ​タカシは課長の指示に従い、近くに積み重ねてあったプラスチック製のパレットに手をかけた。それは、普段は荷物を運ぶための単なる台に過ぎない。 しかし、この戦場では強力な武器となり得る。

​タカシは震える手でパレットを掴み、滑り止めがついた裏面をケンジたちの方に向けた。

「これ以上、ふざけた真似は許しません!」

 タカシがパレットを振り回すと、その硬いプラスチックが空を切る音を立てる。さらに、パレットの表面についた冷凍食品の破片が飛散し、ケンジたちの目をくらませた。

​「くそっ、パレットを盾にしやがった!」

 ケンジは舌打ちしながら、主任が落とした業務用トングを拾い上げる。しかし、パレットを構えるタカシの動きは意外と素早い。彼は普段の怯えた新人ではなく、ただ生き残るために必死に戦っていた。

​ パレットの防御力は想像以上だった。ケンジが放ったトングの攻撃を完璧に防ぎ、逆にその隙をついてタカシはパレットをケンジに押し当てた。

「ぐっ…!」

 不意を突かれたケンジはよろめき、その背後からベテラン社員が金属製のヘラで襲いかかる。

 予測不能な展開

​ 正社員の逆襲は、パレットという意外な武器によって始まった。しかし、戦いはこれで終わりではなかった。

​ その時、工場の奥から聞き覚えのない足音が近づいてくる。

「…どうやら、盛り上がっているようだね」

 現れたのは、工場の清掃を担当するパートの女性だった。彼女は普段、誰とも会話せず、黙々と掃除をしていた。しかし、その手には、まるで槍のように研ぎ澄まされたモップが握られていた。

​「この工場は、誰のものでもない。勝手に血を流して汚すのは、許さないよ」

 パートの女性は、不気味な笑みを浮かべながら、両チームの間に割って入った。

​ 戦いは、正社員対派遣だけでは終わらなかった。

**「第三の勢力」**の登場により、物語はさらなる混迷を極める。

​ この三つ巴の戦い、次はどうなるのでしょうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る