第25話悶々とする吹雪、吹雪を取り合う神達

 chapter023


「……で、なんでそんなに吹雪はぽかんとしてるんだ?」


 目の前でだらんと力が抜けてる……あたしのお気に入りの人間である吹雪を見て、あたしはユイにそう言った。


 ユイもこの様子だと、混乱してる感じだな……

 まあ、帰ってきていきなり……みおのしっぽをもふもふとしていたから凄いずるいと思ってしまったが……


「ええと、主様いわく……脅された、とかなんとか……」


「はぁ、相変わらず何も言わない感じか……でもあいつらしいな」


「分かります、私の主様はいつもこういう感じだから困ります」


「ふーん」


 まあ……という言葉にすごく引っかかるが……

 いいだろう。


 吹雪は、吹雪は……あたしの、その……

 いや、考えるのはよそう……ほんとに何か変なこと考えてしまいそうだ……


 でも、吹雪は……あたしのこと、好きだって……気づいてくれてるのか……

 それが、気がかりだが。



 chapter022


 葵ちゃんのあの言葉……


『西園寺は式神という縛りを嫌う、私もそれが嫌だから作らなかったけど……ちょうどいいわね……』


 もう確実に……舞さんを私に預けるというか……多分……一緒に居てくれ、いや主になってくれってこと……だよね。

 もふもふが増えるのは嬉しいんだけど……場所が無くなってしまう……


 そろそろ、引越しも考えないといけなくなるけど……そもそも、今の会社が酷すぎるから潰れないかなとか思っちゃうけど。


「吹雪様、お困りですか?」


「ああ、あやか……あやさんよ……私はどうすればいいんだい……」


「……?」


 あやが困ってしまっている……いやまあ、何言ってるって思われるかもだけど……

 葵ちゃんに言われた色んな言葉が……脳裏をよぎりすぎている……


 しかも……今になって、


「ああ……ほんとに、どうすればいいんだろうなぁ……」


「私は……吹雪様がしたいことをすればいいと思います、悩むようなら……後悔しないようにすればいいと思うのです」


「あやぁぁ……いいこと言うなぁ……」


「それは……まあ、澪様に沢山言ってきたことなので、当たり前ですよ〜」


 さすがしっかりもの……

 でも、不意に見せること可愛いところがいいんだよなぁ……

 あやは、素敵だよほんとに。


「でも、悶々としてる余裕はないんじゃないですか?よいしょっと」


「まあ……そうなんだよなぁ……ほんとにそれは困ったところ……って、ん?」


「私は、その……吹雪様の選択を尊重しますが」


 そう、私の膝に乗った状態で言われても……なんか私が恥ずかしいだけになってるような気がするんだけど……

 それは、気のせいではないな。


 いや、そもそもだけど……あやってこんなデレてたかな……

 まあ、私を認める的な発言あったけど……私を好きになってくれた、ってことでいいのかな……


 そんなことを考えつつあやの頭を撫でる。

 耳とか……ちょっと触ってみたくなるけど……嫌がるだろうからやめておこう。


「ふぁぁぁ……きもちいい……」


「ふふっ、よかったっ」


「えへへ……もっと、お願いしますなのですよ〜」


 すっかり蕩けちゃって、ほんとにあやはどうしてこんなに可愛いんですか……

 いや、この私の家にいる子達……だけど、やっぱり最初の印象からしたらほんとにこの子は変わった気がする。


 ツンケンしてたのが……今じゃ、こんなにも可愛くなったなんて……

 ほんとに、どうしちゃったんでしょうか。


「なんでかと、申しますと〜」


「ん?」


「吹雪様が我らの事を……こんなにも、受け入れてくれたからですよ、だから……澪様を預けてほんとに良かった」


「あや……」


 やっぱり……良かったんだ……

 あの時、あの選択をして……それで、救われた神様がいるのだから……それで、いいんだ。


「じー……」


「な、なんでしょうか……みおさん」


 まさか……みおに見られているとは思わなかったな……

 あやは全然気にしてないんだけど……もしかして構ってほしい……とか?なのかな。


 まあ、私の膝は元々みおの場所だったから……そりゃ取られたら嫉妬もしちゃうよねぇ……


「かわってなの!あや!」


「それは〜、嫌です」


「なっ……!!」


 しっぽを揺らしながら……そういうなんて……

 あやちゃん……離れて欲しくない……逆に抱きしめたい……!!

 ここは、逃げなければ……二つ手に入る……!!


 なんちゃって……まあ、この家には三人のもふもふと一人の可愛い私のパートナーがいる。

 その一人に逃げても問題は……


「もー!ふぶきはうちのなのー!」


 と、腕をみおの胸の間に挟んでいる?!

 ちょっ、な、何?!何この状況!!癒しか?!天国か?!

 いや……それ以上にこれは……この状況は……私にとってとてつもないほど最高なものだよ!!


「なにをいうのですかー!あやの吹雪様です!!」


「むー!あやは嫌いだって言ってたじゃん!」


「そんなことはないです!信じてたのです!!」


 最初から……もしかしてそうだったのかな……

 それならありがたいけど……でも、あやさん……それはありがたいんだけど、こんなに大声で言われるとは恥ずかしいですよ……


 それに、主人と式神……ではないのか、それは関係性聞いてないから分からないけれど……

 でも、こうやってちゃんと対等に話せてる二人を見ると……


「ふふ……癒しだなぁ、やっぱり」


「何浮気してるんですか」


「なぬ……ゆ、ユイ……」


 ユイもやってきたようで、どうやら私の取り合い?を見てなにか言いたそうな感じがする。

 もしかして……嫉妬とかしたのかな……


 それはそれで可愛いかも……


 いや、可愛すぎるか……このまま抱き締めてくれたら……多分キュンキュンしそうなんだけどなぁ……ユイさーん、なにかしないんですか〜?


「むぅぅぅ、二人ともだめです!主様は私のなんです!」


 と、バックハグをされてしまった……

 これを、待ってた……なんて言ったら、多分怒られるかもだけど……


 ユイが取り合ってくれるならそれはほんとに嬉しい事なんだよなぁ……


「「うっ」」


 やはり、正妻はユイ……か。


 何言ってんだ全く……私は皆を平等に好きだと言うのに……

 いや、特にそれがみおでもあってユイでもあるというか……


 いや、麻宵さんもそうだけど、あやもあやで私の事を好きって……いっぱい言ってきてるし……


 これはどういう……


 いや、それは嬉しいことなんだけど……


「全く、吹雪が混乱してるじゃねぇか……」


 麻宵さんが、とうとうやってきた……

 なんか、顔は……その、合わせづらいけど……でも、ちゃんと庇ってくれそうなら……


「麻宵さん……」


「麻宵様……あなたには関係ないことです!!」


「そ、そうだよ……!まよいは関係ないもん!」


「そりゃあるさ、吹雪は私の、だからな……///」


 ちょっと顔赤くなって言ってる麻宵さん……

 あの時のこと、思い出してるでしょ……まあでも……その、確かに麻宵さんのものになってもいいかも……とか、なんとか……思ってるけど……


「ふーん、そうなんだぁ」


「みお……?」


「えいっ」


「へっ?!」


 みおが、私に……キスを?!

 しかも、唇じゃなくて……ほっぺ?!

 こ、これは……また、大胆なことをして……いやいや……でもこれは可愛いとは思うけど……


 でも、これって……ほんとにあの……えと……なんというか、その……


「な、なら!」


「へっ、ちょっ!」


 というか、全然頭が追いつかないんですけど?!


 あやはあやで……ユイのバックハグから私を奪い強引に胸に抱き寄せてきたし……

 いや、ほんとに……理解が出来なくなってきたんですが……


 しかも、ふにって、ふにってしたこの感触は……これは一体……


「わわわわわわ、私にも……こういうことは……できるです……よ?///」


「あや様まで……」


「あや……でもこれ……いや、極楽……極楽だ……」


 逆に努力を感じれて可愛くて……溶けそうになってしまうのだが……

 この、はわわってなってる表情に加えて……赤面とかは反則なんですよ……あやさん!!


「いい、ですか?」


「はい、すごく……」


「えへへ……」


 可愛い……あやもあやでやっぱり可愛さの次元が違う……

 うん、あやにはなんか可愛いものをプレゼントしようかしら……

 絶対似合う……


「なら……私は……」


 顔を、奪われて……私はいきなり……ユイの膝に頭が来ているんですが……


「にゃに?!」


「こ、これなら……私の顔、いっぱい見れますよ……?///」


「いつも見てるけど……でも、これは……」


 また、違った角度からだから……ちょっと特別感があるんだけど……


 いや……これはまた……うん、珍しく照れてる顔をこんな感じで見ることになっているのだから……これは嬉しいこと、だよね。


「ああ……全く、お前ら全然なってないな……」


「ほお、な、なにか出来るというのですか?」


「ああ、出来るさ、見てろ」


 そう言うと、麻宵さんは私を丁寧に起こしてくれた。

 いや、それ以上に……さっきの三人とは違って……まるで絹を触るかのように……優しく、優しく、包み込むように私に触れた……


「えと、麻宵……さん?」


「ふふ、久しぶりだな、お前とするのは……」


「へっ……?!」


「……」


「?!」


 唇……?!いきなり?!

 しかも……舌まで入れてきてる……前のと違って……今度は……その、麻宵さんの味とか体温が……

 一気に、伝わってくる……


 それだけじゃない……私の、この……胸から溢れ出るこの気持ち……感覚は……


 一体どこから、やって来るか……それが分からないけれど……こうやってべろちゅー……までできたこと……皆に見られてるけどすごい……嬉しいかも……


「「「な、何して……///」」」


「っは……これが、大人のキスだ……///」


「はわ、はわわ……」


 みんな、悔しそうにしてるけど……でもこれ、私やられてる側からしたら恥ずかしいんですけど……!!

 いや、それ以上に……


 恥ずかしい!!


 皆とどういう顔したら……


「負けない」


「ええ」


「麻宵様だけには……」


 な、なんか……とてつもない連合が……できたような気がして、武者震いが止まらなくなってしまった私なのであった……


 え、これから……どうやって過ごせば……いいの?



 to be continued

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