第5話神様、現代の家に来るその3湯船での告白

chapter008


「ふ、ふぶき……その、恥ずかしいの……」


「ふふっ、なんの事かな〜」


「うぅ……分かってるのに……ひどいのです……」


 いじわるを、してみたくなってしまった……


 身体を洗った後……私は耳を触ってしまったのだ……


 さっきまで耳を……触らないようにしているけれど……でもつい……うっかりさっき触ってしまったら……とてもいい反応というか……可愛い声が出てしまったので……


 シャンプーついでに耳も今洗っているところなのだけれど……これは……ほんとに人が触ったらいいものなのかと……ちょっと……いや、すごい疑問に思うけれど……


 これは、なかなかいい。


 ぷにぷにしているところもあって、髪のように毛並みがさらさらでとても触り心地がいい……

 こんな経験したことないから……ほんとにこれはとてつもないことだってことがよく分かる。


「うぅ……恥ずかしい……」


「ふふっ、可愛い……」


「や、やめ、ぁぁ……」


「?!」


 まずい、やりすぎたか……いやだけど、みおが可愛いのが悪い……

 そう、みおが可愛いのだから……

 で、でも……流石にやりすぎたか……


 みおの顔を見たくても……多分、怒ってると思うからよく見れないのが難点ではある……けれど!

 でも今見たらぜったい怒られる……


 だから……その、私はとりあえず……みおに怒られないように……今はとりあえず……誤魔化すかのように私はみおの髪を撫でながら綺麗にしている。

 どんどんとつやが出始めるのが……いい。


 さっき洗ったのに。


「ふぶき……もう、やめよ……?」


「う、うん……その、ごめん……」


「ううん……い、いいの……」


「あ……えへへ……」


「じー」


 睨まれてしまっているのだろう……うん……

 これは、反省点かな……


 さっき身体洗った時、しっぽも触れたから……とりあえずそれは、いいのかな。

 ふわふわは……水に濡らしているからしてなかったけど触っててさらさらだったからか元からそういう感じなんだろうなってことがよく分かる。


 それにしても……みおはほんとに可愛い。


 いや、可愛い以上に……可愛いという言葉がよく似合う。


「可愛いって……いいすぎなのです」


「あはは……ごめんごめん」


「むぅ……」


「……っ」


 やっぱり……仕草一つ一つが……ほんとに可愛い……

 可愛いから……なんというか、可愛いしかもしかしたら出ないかもしれない。

 だって、可愛いのだから。


「あ……そうだ、湯船入ろうか」


「うん?うん」


 そうか……湯船は分からないのかな?

 もしかして……みおの時代はなかったとか……そうだとしたらどうやって身体を洗ってたんだろう……

 それは、気になるかも。


「あ、先入ってみて来てご覧?」


「わ、わかったの!」


「ふふっ」


 私は、湯がはられている中に入る。

 やっぱり、ユイが入れてくれたからかとても暖かい……


 この……課長たちにやられた疲れが全て無くなっていきそうな……

 吹き飛びそうな……そんな感じだ。


「ふぅぅ……あったかぁぁい……」


「ふぶき……気持ちよさそう」


「どう?入ってみる?」


「うん!!」


 そう言い、みおは私の言う通りに湯船の中にゆっくりと入った。

 慎重に、慎重に……恐らくだけど、温度を確かめるようにゆっくりと入っているその様子はとても可愛く思ってしまって……


 その場で意識を失いそうだった。


 いけないいけない……

 それはそれでみおに心配をさせちゃう……

 まあ、でも……可愛いからいっか。


「ひゃぁ……熱い、熱いの!」


「大丈夫っ、ゆっくり……ゆっくりでいいんだよ〜」


「う、うんなのっ!」


 ゆっくりと沈んでいく様は……これもまた可愛いのだから……なんか、いちいち気絶してしまいそうになるのはこれはこれでずるいな。


「ふぅぅ……あったかぁぁい……」


「でしょでしょ?」


「すごぉい……なんか……とけそう……」


「ふふっ、良かったっ」


 ていうか、ほんとに溶けそうな表情してるじゃん。

 もしかして……それだけ気持ちよかったのかな……そうなのだとしたら……可愛い!!


 可愛いだけじゃないか!!


 可愛いの可愛いが大暴走している!!


「ふぶき……?」


「なに?」


「可愛い、いいすぎ……」


「それはそれは、でも可愛いから」


「むう……」


 ほぼ膨らませて、耳を凹ますのもこれまた可愛い……

 それに、しっぽも少し顔をのぞかせているようでとてもこの光景は可愛すぎる……

 いや、反則級だろうこんなの……


 可愛すぎて……なんというか、可愛いしか多分口にしてないと思うけどそれほどこの子は可愛かったのだ。


 可愛いから可愛いで可愛いが爆発してる……


「ふぶき」


「うん?」


「聞きたいんだけど……その、うちの事……なんだよね」


「みおのこと?」


「うん……」


 みおのこと……なにか、私聞かれることでもあったかな……

 いや、違う……


 多分だけど、この子はなんで自分の出自のこととかを聞かないのかということを聞きたいのだろうな……

 まあ、それは理由があるけどね。


「どうして、うちのこと……聞かないの?」


「うーん、それは……どうしてだと思う?」


「え……?」


「どうして私は、みおのこと聞かないと思う?」


「それは……うちが、怖いから……」


 それは違うんだよなぁ……

 まあ、最初だけだよ……こんなに久しぶりに怖くなったのは。

 というか、雪女のユイと過ごしてる時点で怖いも何も無いだろうと思うけれど……


 、こういう存在と出会ったから……多分だけど、少し緊張してたのかな?

 それだと……思うんだよね、きっと。


 だから、本当は怖くなかった。


 怖くもないし……むしろ、助けようと思った。


 だから、こうして……今みおはここにいるんじゃないのかな。


「……っ」


「みお?」


「ううん……でも、ほんとに……怖くないの?」


「うん、だって……こんなにかわいいかわいい神様ほかにいないもん!!」


 そう言い、私はみおのことを抱きしめた。

 強く、強く……

 どこにも行かせないように……私の胸の中で、ずっとずっと……いていいよって言うように……


 私は、みおを離さなかった。


「ふ、ふぶき?」


「私は……みおのこと、怖くないよ。それに……」


「それに……?」


「それに……その……」


「……?」


 こんなの……出会ったばかりで言っていいのか……いや、そんなの……関係ないだろう。


 私の感情は……誰にも止められない……


 いや、止めちゃいけない……


 これが衝動なのだとしたら……私の気持ちは嘘になってしまうから。


 そんなの……悲しいじゃないか、苦しいじゃないか……寂しいじゃないか……


 私は、嫌だよ。


 気持ちを伝えられないなんて……そんなの私が許さない……

 自分に嘘をつきながら生きてきたから……

 もう……ここで嘘なんてつけるはずがない……!!


 だから……私は伝える。


 みおに、私の全てを、どんなこと思ってるか……そして、あなた事をどうしたいかを。


「みお……私はね、ちょっと気が早いかもしれないけれど……伝えたいことがあるんだよね」


「伝えたい……こと?」


 抱きしめながら……伝えてしまおう……

 今の私にしかできない、最大限の表現だと思うから。


「私、あなたのこと……家族にしたいの」


「家族……?」


「そう、家族。ユイがいて、あなたがいて、わたしがいて……この三人だけで……私ずっと過ごしていたい……ずっと、あなたの傍であなたを幸せにしたい……そう、思ったの」


「幸せ……家族が、幸せなの?」


「そうだよ……ううん、まだ……分からないかもしれないけれど……ゆっくりと、ゆっくりと……少しずつ少しずつでいいから、私はあなたを……みおを幸せにしたい。だめ、かな?」


 水の音だけが響いている。


 ポチャン、ポチャンと、落ちる事に私の鼓動がどんどんと激しくなっているということがよく分かる……


 いや、それだけじゃない……

 私の鼓動も激しくなっていて……周りの音が鼓動だけになっているほど私は今、緊張しているんだ。

 さっきとは、また違う……

 変わった緊張を……


「うち……なりたい」


「え?」


「ふぶきと幸せに……なりたい!!家族になりたい!!だから……だめじゃないの!!」


 そういい、みおは私のことをよりきつく抱きしめた。

 それは……反則だよ……


 いや、それを純粋にやることができるのは……多分みおだからだろうなぁ……


 だけど、嬉しいな……

 みおにこうして……家族になる事……そんな淡い昔の思い出が……こんな形でできるなんて……


「告白して、よかったな……」


「えへへっ、ふぶきっ」


「なぁに?」


「だいすき!」


「うっ……」


 それは……それは、だめだよみお……

 反則すぎるし……なんというか、その……もう、私の心臓が……耐えられないよ……!!


「ふ、ふぶき?!」


 でも……ありがとう……みお。


 すんなりと、受け入れてくれるなんて……


 ほんとにまるで、みたいだよ。


 だけど、嬉しいよほんとに……ほんとに嬉しいよ。


 私は、この思いを喜びながら……再びみおを抱きしめた。

 今度は、家族になった喜びを噛み締めて……



 to be continued

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