第2話

その夜、彼は店のシャッターを閉めた。

最後に、椅子をひとつずつ丁寧に拭いた。

祖母が何十年も触れてきた椅子。

そこには、無数の人生が座っていた。


翌朝、駅前通りはいつも通りの喧騒に包まれていた。

だが、角の店だけが、静かに時を止めていた。

「ビューティーサロン・さちこ」の看板は、朝日に照らされて、少しだけ輝いて見えた。


彼はその光を見ながら、祖母の言葉を思い出していた。

「髪を整えると、心も整うのよ」

その言葉は、今も彼の中で、静かに息づいている。

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