カラスの微笑が向かう先。〜1分で読める創作小説2025 参加用SS集
李紅影珠(いくえいじゅ)
遅すぎる後悔の欠片。
黒板の端にはあれから数ヶ月経った日付が書かれている。ちょうどお昼休みだ。窓際にある自分の席に座る。花をもらったのって初めて。ほんの少し、煮えたぎるような気持ちが安らぐような気がした。
「いい気味だよね。おかげでクラスの雰囲気がマシになった」
「ネットで特定されちゃったし、退学は妥当だよね」
「……でもさぁ、他人事みたいだけど、あの子にとってはこのクラスの全員が敵だったんだよ」
……分かってるじゃん。見てみないふりも同罪、それに私がどんな人間だったとしても、いじめられる人間にも原因があるなんて加害者の言い訳でしかない。
「反省してると思う?」
「ないね。SNS見てみ、学校ないからって好き放題してる。むしろ感謝してそうなくらいだよ。救いようがない」
開いて見せたスマホをのぞき込むと、確かに笑顔の写真ばかりだ。
……怒りでどうにかなりそう。
「そういえばさ、三浦修二の話、知ってる?」
唯一私の味方だった彼氏の名前だ。私のことを本当に心配していたのは、きっと彼くらい。
「それが、新しい彼女できたらしくてさ」
……え?
「しかもそれがあの子の姉だってさ。うちの兄貴がお姉さんと同じクラスなんだけど、どうもずっと三浦先輩のこと好きだったらしくて。ショック受けてるところに付け込んで、みたいな?」
「うわ、えっぐ。それってどっちも最低じゃない?」
「いや、お姉さんがかなり
「だとしてもさー……流石にかわいそうだよ」
あいつ、あいつ……! いっつも人のものを欲しがって、ケチつけたり演技したり、そうやって昔からいろんな物を奪われてきた。それなのに。悲しいとかかわいそうとか、同情でもいいからほんの少しくらい心を動かすだろうって、思ってたのに、それどころか、私のこと利用しやがった!! 私の唯一の味方なのに! 修二だけは、絶対にとられたくなかったのに!
あいつになんて言ってやろう。とにかく家に帰って、ぶん殴ってやりたい……!
家には誰もいなかった。私の部屋を覗いてみると、段ボールだらけになっていた。流石に罪悪感が出て……ううん。もう期待しない方がいい。
「たっだいまー……って、誰もいないかー。あーあ、両親そろって責任の押し付け合いで離婚寸前とか、ほんと醜いっての」
見た途端に怒りを思い出し、顔めがけて握りこぶしをふるう。けれど、当然のように私の手はすり抜けた。
「あいつも馬鹿だよね。死んだって誰も、なーんにも変わんないのに。いっそ皆殺しちゃえばよかったのよ」
両親にも、こいつにも、私をいじめたあいつらにも復讐したい。今後の人生と心に大きな傷跡を残せるって思ったのに、爪痕ほどの傷すら、ついてないっていうの? じゃあ私はなんのためにあんな怖い思いをしたの? ……あの時の私はこうするしかないと思ってた。でももしかして、あんなことしなきゃ、復讐する方法って、他にいくらでもあったのかなぁ……
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