第12話 魔王討伐への出発

 ––––

 魔王討伐の決意


 魔王軍の襲撃を退け、王都に一時の平和が戻った。だが、俺――勇者・佐藤健一の胸は決して安堵に満ちてはいなかった。


 王都の空はすっかり晴れ渡り、人々は勝利に沸いている。だが俺の心には重い影が落ちていた。


「お兄さん、顔が怖いよ?」


 隣でルナちゃんがスープをすすりながら首をかしげる。


「俺さ……今までスープ作って、魔王軍撃退して、確かに頑張った。でも、まだ終わってないんだよな」


「終わってないって?」


「魔王を倒さない限り、この戦いは終わらない。王都を守っただけじゃ、また同じことが起きる」


 俺は鍋の柄杓をぎゅっと握った。スープでみんなを守れたのは誇らしい。だが守るだけじゃダメだ。俺たちは攻めなきゃいけない。


「……だから決めた。魔王の城に向かう。討伐隊を編成してな」


 ルナちゃんとロイドさんが顔を見合わせた。


「やっと本気出すんだね、お兄さん」


 ロイドさんは口元を引き締め、静かにうなずいた。


「勇者様の決意、承知しました。我らも共に参ります」


 王都を守った次は、いよいよ魔王討伐――物語は新たな局面に突入しようとしていた。


 ――

 旅立ちの準備


 俺たちは王様のもとを訪れ、魔王討伐のための遠征隊を組むことを提案した。


「勇者よ……魔王討伐か」


 玉座の上の王様はしばらく黙り込み、やがて深いため息をついた。


「そなたがいなければ、この国は王都ごと滅んでおっただろう。討伐の許可は下ろう。ただし……」


「ただし?」


「魔王の城はこの大陸の果て、黒の森を越えた死の谷の先だ。危険な旅になる。兵だけでは足りぬ。勇者よ、そなたの力――そのスープの力が必要だ」


 やっぱりそこか。俺は苦笑しながらも、力強くうなずいた。


「もちろんです。俺のスープで全員を無事に魔王の城まで送り届けます」


 ルナちゃんがにやりと笑う。


「スープで旅も攻略しちゃうんだね!」


 その後、王様の命令で騎士団や補給隊、魔法兵が集められ、討伐隊の編成が始まった。王女セリーナも見送りに訪れ、俺の手をぎゅっと握った。


「勇者様……必ずご無事で。あなたのスープは、この国の希望です」


 そんなこと言われたら、絶対負けられないじゃないか。


 ――

 出発の朝


 旅立ちの朝、王都の広場には多くの市民が集まっていた。彼らはスープで守られた王都の勇者を送り出すためにやってきたのだ。


「勇者様、頑張ってください!」


「魔王を倒して、またスープを飲ませてください!」


 ……後半の声援がちょっと気になるが、まぁいい。


 俺は出発前に最後のスープを作り、討伐隊全員に振る舞った。これで旅の始まりから全員が万全の状態だ。


 ルナちゃんは杖を背負いながら、目を輝かせる。


「さぁ行こう、お兄さん! 魔王を倒しに!」


 ロイドさんも剣を肩に担ぎ、無言でうなずいた。


「勇者様、出発します!」


 俺は大きくうなずき、馬車に乗り込んだ。


 ――


 こうして俺たちの魔王討伐の旅が始まった。


 だが、まだ知らなかった。


 この旅の途中で出会う仲間たちのことも、魔王の真の狙いも。


 そして、俺のスープがもたらすさらなる力と運命を――。


 香ばしい匂いを風に乗せながら、俺たちは未知の冒険へと一歩を踏み出したのだった。

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