第6話 暗殺者、スープに敗れる

 王城に泊まったその夜。


 俺はふかふかのベッドに寝転びながら、天井を見つめていた。


「……ああ、俺の異世界ライフ、完全にスープ屋さんだよな」


 勇者として呼ばれたはずが、魔王討伐は二の次で、やってることはスープの試食会。いや、王様や王女様まで絶賛してくれるのは嬉しいんだけどさ。


「……でも、昼間のあの貴族の会話が気になるな」


 “始末してしまった方がいい”って……俺のことか? いやいや、まさか。


 ⸻


 暗殺者の襲来


 その時だった。


 カシャン、と窓の外から音がして、黒装束の男がひらりと部屋に飛び込んできた。


「勇者サマ。悪く思うな」


 出たーーー!! 本当に暗殺者来たーーー!?


 男は短剣を抜き、まっすぐ俺に向かってくる。やばいやばいやばい!!


「ちょ、待って! 俺まだ魔王とも戦ってないんだけど!?」


 俺はとっさに近くの鍋を手に取った。そう、さっき夜食用に作っていたスープ入りの鍋だ。


 ⸻


 スープ vs 暗殺者


「くらえ! 熱々スープアタック!!」


 鍋の中身をぶちまけた瞬間――


「ぎゃああああああああ!!!」


 暗殺者が悲鳴を上げてのたうち回る。いや、熱いからとかじゃない。


 スープを浴びた体がみるみる光に包まれ、筋肉が盛り上がり、傷跡が消え――


「な、なんだこの力は……体が……強く……なっていく……」


 まさかの暗殺者パワーアップ。


「ええええええええ!?」


 ちょっと待て、俺今敵を強化しちゃった!?


 ⸻


 大逆転のカギ


 強化された暗殺者が短剣を振りかざし、迫ってくる。俺は必死に逃げ回った。


「うわあああああ! ちょ、ルナちゃんロイドさーーーん!!!」


 ドアをぶち破って飛び込んできたのはルナちゃんとロイドさんだった。


「お兄さん、なにやってんの!?」

「説明はあと!! そいつ強化されてるから気をつけて!!」


 ルナちゃんが杖を構え、火球を放つ。だが暗殺者は信じられない動きでそれをかわした。


「ぐっ……スープの力、恐るべし……!」ロイドさんが舌打ちする。


 ⸻


 俺は必死に考えた。どうすれば……そうだ!


「ルナちゃん! この薬草入りスープを飲んで!!」


「え? 戦闘中にご飯!?」


「いいから早く!!」


 ルナちゃんがスープを一気飲みした瞬間――


「魔力があふれてくる……メガ・ファイア・ストーーーーーム!!!」


 王城の一室が一瞬で昼間の太陽みたいに明るくなり、暗殺者は完全に吹っ飛んだ。


 勝った。


 ⸻


 そして陰謀へ


 気絶した暗殺者を調べると、王国の紋章入りの短剣を持っていた。


「……やっぱり王国の中に敵がいるのか」


 ロイドさんが眉をひそめる。


「お兄さん、これからどうするの?」ルナちゃんが不安そうに聞いてきた。


「決まってる。俺たちは魔王を倒す。でもその前に、この王国の裏切り者を突き止める」


 こうして俺の異世界スープライフは、陰謀と戦いの物語へと進んでいくのだった――。

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