第三章 記憶
「剛の死因は……僕たちの裏切り?」
健太はそう言って、膝から崩れ落ちた。彼の顔は、この世の終わりのように絶望に染まっていた。僕たち、結城悠太、悠真、沙羅、梨奈も、同じように絶望していた。血まみれのカルテに書かれた「友人たちの裏切りによって、心停止した」という言葉は、僕たちの心に深く突き刺さっていた。
「そんな、ありえない……。僕たちは、剛を裏切ってなんかいない!」
沙羅が涙を流しながら叫んだ。彼女の言葉は、僕たちの心の叫びでもあった。僕たちは、剛を殺した覚えなんてない。しかし、ゲームは僕たちの過去の「裏切り」を暴き、それを剛の死と結びつけた。
悠真は静かに、しかし確信に満ちた声で言った。
「このゲームは、僕たちの過去の罪悪感を刺激して、精神的に追い詰めようとしている。そして、その結果、僕たちが自分自身を『剛を殺した』と錯覚するように仕向けているんだ」
悠真の言葉に、僕たちはハッとした。確かに、このゲームは僕たちのスマホのデータを抜き取り、過去のトラウマを再現している。そして、そのトラウマを剛の死と結びつけることで、僕たちの心を支配しようとしているのだ。
「じゃあ、僕たちは、このゲームをクリアしなきゃいけないってことか?」
健太がそう尋ねると、悠真は無言で頷いた。
「そうだ。このゲームをクリアして、ゲームマスターの正体を暴き、剛の無実を証明しなくちゃならない」
僕たちは、再び決意を固めた。
僕たちは、ゲーム内の地下室を進んでいく。通路の壁には、不気味な落書きや、血痕が残されている。そして、その壁には、剛の過去の出来事が、まるで壁画のように描かれていた。
「これ、剛の高校時代のことだ……」
僕たちは、その壁画を見て驚いた。そこには、剛が高校生の頃に、僕たちと出会う前の出来事が描かれていた。剛がバスケットボールの試合で、チームメイトと揉めている姿。剛が一人で、夜道を歩いている姿。そして、剛が誰かに向かって、助けを求めている姿……。
「剛、僕たちに出会う前、何かあったのか?」
健太がそう呟いた。僕たちは、剛の過去を何も知らなかった。彼はいつも、明るく、快活で、僕たちを引っ張っていってくれた。しかし、その笑顔の裏には、深い闇が隠されていたのかもしれない。
すると、僕たちのヘッドセットから、また微かな声が聞こえてきた。
「……助けて……」
剛の声だった。
僕たちは、その声に導かれるように、地下室のさらに奥へと進んでいく。
地下室の奥には、一つの扉があった。扉には「記憶の図書館」と書かれていた。
僕たちは、その扉を開けることをためらった。
「記憶の図書館……。もしかしたら、私たちの過去の記憶が、すべてここに保存されてるの?」
沙羅が怯えたように言った。
「かもしれない」
悠真がそう言って、扉を開けた。
扉の向こうには、たくさんの本が並べられた図書館が広がっていた。しかし、その本は、僕たちの人生のカルテだった。
「悠太、見て!」
沙羅がそう言って、一つの本を指差した。その本には、僕の名前が書かれていた。
僕は、その本を手に取り、ページを開いた。すると、そこには、僕が高校生の頃に、親友を裏切った出来事が、細かく書かれていた。
僕は、その本を閉じた。
「このゲーム、本当に、僕たちの過去をすべて知ってるんだ……」
僕たちは、恐怖に打ちひしがれた。
しかし、その恐怖よりも、剛の過去を知りたいという気持ちが勝った。
僕たちは、剛の本を探した。そして、一つの本を見つけた。
その本には「篠原剛」と書かれていた。
僕たちは、その本を手に取り、ページを開いた。
すると、そこには、僕たちが知らなかった剛の過去が書かれていた。
剛は、高校生の頃、バスケットボール部のキャプテンだった。しかし、試合中に、チームメイトと揉め、大怪我をさせてしまった。そして、そのチームメイトは、二度とバスケットボールをすることができなくなった。
剛は、そのことを深く後悔しており、チームメイトに謝罪することができなかった。
「剛……そんな過去があったのか……」
健太がそう言って、涙を流した。僕たちは、剛の苦しみを何も知らなかった。
僕たちが、剛を裏切ったと思った出来事も、実は剛自身の苦しみだったのかもしれない。
僕たちは、剛の過去を知り、このゲームをクリアすることを決意した。
僕たちは、図書館の奥へと進んでいく。すると、そこには、一つの扉があった。
扉には「真実の部屋」と書かれていた。
「真実の部屋……。もしかしたら、ここに、剛の本当の死因が隠されているのかもしれない」
悠真がそう言って、扉を開けた。
扉の向こうには、何もない、真っ白な部屋が広がっていた。
部屋の中央には、一つの机があり、その上に、一枚の写真が置かれていた。
写真は、高校生の頃の剛と、何故か別々の高校時代を送っていた僕たちが一緒に写っているものだった。
そして、写真の裏には、こう書かれていた。
『真実を知る者は、この中にいる』
「真実を知る者……?」
僕たちは、全員、顔を見合わせた。
僕たちの中に、剛の本当の死因を知っている者がいるのか?
僕たちは、互いに疑心暗鬼になった。
「嘘だろ……。僕たちは、みんな、このゲームの被害者だろ?」
健太がそう言って、僕たちを睨みつけた。
「私たちの中に、裏切り者がいるってこと?」
沙羅が怯えたように言った。
その時、僕たちのヘッドセットから、また微かな声が聞こえてきた。
「……信じるな……」
剛の声だった。
僕たちは、その声に導かれるように、互いの顔を見合わせた。
そして、その瞳の中に、深い闇が潜んでいるのを見た。
その夜、僕たちは、誰も眠ることができなかった。
互いに疑心暗鬼になり、誰も信用することができなかった。
健太は、悠真を、悠真は、沙羅を、沙羅は、梨奈を、そして僕は、健太を疑っていた。
僕たちの友情は、このゲームによって、少しずつ崩壊し始めていた。
「僕たちの中に、裏切り者がいるとしたら……」
悠真がそう言って、僕たちを睨みつけた。
「このゲームは、その裏切り者を見つけるための、テストなのかもしれない」
悠真の言葉に、僕たちは、誰も答えられなかった。
そして、僕たちの心には、深い闇が、刻み込まれた。
翌日、僕たちは再びサークルルームに集まった。
僕たちの間には、重苦しい空気が漂っていた。
「僕たちの中に、裏切り者がいるとしたら、誰だと思う?」
健太がそう尋ねると、誰も答えなかった。
その時、梨奈が静かに言った。
「裏切り者、いるかもしれないね」
彼女の言葉に、僕たちは驚いた。
「梨奈、どういうことだよ?」
健太が尋ねると、梨奈は首を傾げた。
「だって、このゲーム、私たちみんなの過去を暴いてるんでしょ?だったら、みんな、何かを隠してるってことじゃない?」
梨奈の言葉に、僕たちはハッとした。
確かに、僕たちは、このゲームで暴かれた過去を、誰にも話していなかった。
僕たちは、互いに隠し事をしていた。それが、このゲームの目的だったのかもしれない。
「じゃあ、このゲームは、私たちを試しているの?」
沙羅がそう尋ねると、悠真は無言で頷いた。
「そうだ。このゲームは、僕たちの友情を試しているんだ」
僕たちは、再び決意を固めた。
僕たちは、互いを信じ、このゲームをクリアし、剛の無実を証明する。
そして、僕たちは、再び友情を取り戻す。
僕たちは、ゲーム内の病棟を進んで行き、辿り着いたのは病棟の最深部、屋上だった。
屋上の扉を開けると、そこには、夕焼けに染まった空が広がっていた。
屋上の真ん中には、一つの手紙が落ちていた。
手紙には、こう書かれていた。
『真実は、あなたたちの心の中にある』
「真実……?」
僕たちは、全員、顔を見合わせた。
僕たちの心の中に、剛の死の真実が隠されているのか?
僕たちは、再び、互いに疑心暗鬼になった。
その時、僕たちのヘッドセットから、また微かな声が聞こえてきた。
「……裏切り者……」
それは、僕たち全員に向けられた、剛からの言葉だった。
僕たちは、その言葉に、絶望に打ちひしがれた。
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