9月23日 おねえちゃん

 今年もこの日がきちゃったな。

 わたし、ここで事故にあって死んだんだよね。

 なんでか、ここから離れられなくてずーっと、何年もいるんだけど誰もわたしのことに気づいてくれない。

 道の反対側のちょっと離れたところにお花とかお菓子とかジュースなんかを置いて手を合わせてる人がいるけど、そこじゃないんだわー。わたしが最期に飛ばされて転がっちゃったの、ここなのよ。あっちは最初に車にはねられたとこ。

 で、それもだんだん少なくなって、今ではお母さんと妹が命日に来るのと、たまーにお友達だった子が思い出したみたいに手を合わせてくれるのと。

 あ、今年も来てくれた。

 でもそこじゃないんだよー、こっちこっちー。

 って言ったって気づいてくれないよね。

 ……妹が、こっち見た。

「おねえちゃん?」

 え? 見えてる?

「おねえちゃんだ!」

 妹が道路を横切ろうと走り出した。

「あ! だめ! 車来てる!」

 わたしの声とお母さんの叫び声が重なった。

 妹に向けて車が、ブレーキかけてるけど間に合わない!

 させるかぁ! 妹までこっちきちゃだめー!

 無我夢中だった。

 ずーっと動けなかったわたしが、あの場所から飛び出して妹を突き飛ばした。

 よろけた妹が道の端に倒れる。

 お母さんが泣きながら駆け寄ってきて妹を抱きしめた。運転してた人も車から飛び出してきた。

「おねえちゃんが助けてくれたよ」

 妹がわたしを見て言う。

「そうだね。きっとそうだね」

 お母さんには見えてないか。

「おねえちゃん、これからもずっと一緒にいてよ」

 妹の無邪気な笑顔に、力が抜けた。

 しょーがない。こうして動けるようになったし、あんたの守護霊になってあげる。

 あんた、危なっかしいからわたしが守ったげるよ。




 秋分の日

 「国民の祝日」の一つ。「秋の彼岸」の中日でもあるため、「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」ことを趣旨としている。

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