💫第6首 かささぎの💫

 かささぎの 渡せる橋に おく霜の

 白きを見れば 夜ぞふけにける(中納言家持)


 夜空は澄みきり、星々が川のように流れていた。

 そのきらめきは、かささぎが翼を並べて作った橋のようにも見える。

 天と地をつなぐその橋は、淡く揺らぎながら静かに光っていた。


 ついさっきまで、隣にいた。

 笑い合いながら歩く帰り道、他愛もない話がいつまでも続いてほしかった。

 けれど気づけば別れ、残されたのは冷たい夜気と、胸の余韻だけ。


 足もとには霜が降り、月明かりに照らされて白く浮かび上がる。

 吐く息も白く、ひとり立ち止まる身体を冷気が包み込んだ。

 夜は長いはずなのに、こんなにも早く更けていく。


 会えない夜も、こうして星を仰げば、同じ空の下でつながっている気がする。

 かささぎの橋が遠い天を渡すように、想いもまた、見えない道を越えて届いてほしい。


 今夜も眠れない。

 繰り返し思い出すのは、最後に交わしたあの笑顔だった。

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